生胆いきぎも)” の例文
旧字:生膽
長崎を根拠ねじろにして博多や下関へドンドン荷を廻わすようになりましたが、その資本もとでというたなら、大惣の生胆いきぎも一つで御座いました。
近世快人伝 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
手繰たぐり込むような語気と、その体がもっているといえる妙な吸引力とが、高氏には、ぬらと、自分の生胆いきぎもさわった気がした。
私本太平記:01 あしかが帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
しかし何分なにぶん生胆いきぎもを取られるか、薬の中へ錬込ねりこまれさうで、こわさが先に立つて、片時も目をねむるわけにはかなかつた。
二世の契 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
きっと生胆いきぎもを引抜き、骨を砕いて……血潮で何か造るのだ。——人間の生血と生胆と白骨で丸薬か何か造るのだ。彼方あちらに大きく土を盛って火をく処が出来ている。
捕われ人 (新字新仮名) / 小川未明(著)
切支丹きりしたんがさらって行って、生胆いきぎもを取るんじゃありませんか——世間ではそう言っていますよ」
「よい生犠いけにえが、来よりました。老人、若いの、御好み次第、生のよい生胆いきぎもがとれる——牧殿」
南国太平記 (新字新仮名) / 直木三十五(著)
「これは、これは、髪長彦さん。遠方御苦労でございました。まあ、こっちへおはいりなさい。ろくなものはありませんが、せめて鹿の生胆いきぎもか熊の孕子はらみごでも御馳走ごちそうしましょう。」
犬と笛 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
さてさてあぶない生胆いきぎも取り、ああ何もかも差しあげてしまいますから、二日でも三日でも誰か私をゆっくり眠らせて下さい。私の体から、何でも持って行って下さい。私は泥のように眠りたい。
新版 放浪記 (新字新仮名) / 林芙美子(著)
尾にひれがつき、若い娘ばかり十五人も生胆いきぎもをぬかれたように言う。
平賀源内捕物帳:萩寺の女 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
親友の生胆いきぎも資本もとでにして、長崎の鯨取引に成功した湊屋仁三郎は、生れ故郷の博多に錦を? 飾り、漁類問屋をやっているうちに、日露戦争にぶっつかり
近世快人伝 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
鶏の生胆いきぎも
新版 放浪記 (新字新仮名) / 林芙美子(著)
生胆いきぎも取りだの死人しびと使い、奴隷売買、人殺し請負いナンテものは西洋人でなくちゃ出来ない仕事だと聞いておりましたがマッタクその通りだと思いましたナ。
悪魔祈祷書 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
資金かねに詰まって友達の生胆いきぎもを売って大間違いを仕出かしたのを幕切ちょんにして、立派にやめてしまいましたが
近世快人伝 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
あまりの浅ましさに心くじけ、武士の身に生れながら、生胆いきぎも取りの営業なりはひを請合ひし吾が身の今更におぞましく、情なく、長崎といふ町の恐ろしさをつく/″\と思ひ知りければ
白くれない (新字新仮名) / 夢野久作(著)
山々の段々畠に棚引く菜種、蓮花草の黄に紅に、絶間なく揚る雲雀ひばりの声に、行衛も知らぬ身の上を思ひ続けつゝ、幾度となく欠伸し、痴呆うつけの如くよろめき行くさまひとへに吾が生胆いきぎもを取られたる如し。
白くれない (新字新仮名) / 夢野久作(著)