生残いきのこ)” の例文
旧字:生殘
……私は可厭いやな事を聞いた、しかし、祖母と小さい弟妹を死なせて水戸屋を背負って生残いきのこったと言う娘分、——あの優しいおんなたしかにと
甲乙 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
飛騨の山国の風雪ふうせつゆうべ、この一軒家に於て稀有けうの悲劇を演じたる俳優やくしゃうちで、わずか生残いきのこっているのは幸運の冬子一人いちにんに過ぎぬ。したがってくわしい事情は何人なんぴとも知るによしない。
飛騨の怪談 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
それから房枝は、いろいろと願って、生残いきのこりの団員たちを呼びあつめてもらった。こんなときに帆村がいれば、どんなに助かるかもしれないのだけれどと、くやしくなった。
爆薬の花籠 (新字新仮名) / 海野十三(著)
生残いきのこっていた水上機が四機、肉弾となって矢のように突撃してきたのは、敵ながら勇ましかったが、青木光線で射たれると、あわれや、みな火のかたまりになって、もえ落ちてしまった。
昭和遊撃隊 (新字新仮名) / 平田晋策(著)
生残いきのこった者といえども、今では、死人も同様だ。
怪奇人造島 (新字新仮名) / 寺島柾史(著)
洪水こうずゐ生残いきのこつたのは、不思議ふしぎにもむすめ小児こどもそれ其時そのときむらからともをした親仁おやぢばかり。
高野聖 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)