生国しょうこく)” の例文
旧字:生國
渋江氏の一行では中条が他郷のものとして目指めざされた。中条は常陸ひたち生だといって申しいたが、役人は生国しょうこく不明と認めて、それに立退たちのきさとした。
渋江抽斎 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
こういう身の上の少女が生国しょうこくを知らず、ふた親の名を知らず、わが名を知らないのは、さのみ珍しいことでもない。
青蛙堂鬼談 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
なんでもこのものの生国しょうこく西蔵チベットだということでありますが、幾歳いくさいになるかわからないような人間にんげんでありました。せいひくく、ひかりは、きらきらとひかっていました。
北海の白鳥 (新字新仮名) / 小川未明(著)
「ハッ。返す返すの御親切……関所の手形は仇討あだうちの免状と共々にしかと所持致しておりまする。讐仇かたき生国しょうこく、苗字は申上げかねまするが、御免状とお手形だけならば只今にもお眼に……」
斬られたさに (新字新仮名) / 夢野久作(著)
「だれが聞いたところでも、それが、ひどい佐賀なまりだったというんです。……ねえ、旦那、お祖師さまのご生国しょうこく安房あわ小湊こみなと、佐賀なまりのお祖師さまなんざ、ちと、おかしいでしょう」
殿「其の方生国しょうこく何処どこじゃ、美作ではないという事を聞いたが、左様さようか」
菊模様皿山奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
如何いかに相成りまするか! 早速人をつかわす所存で御座りますが、生国しょうこく生地しょうちにおいて、御落胤で無いという証拠のあがらぬ限り、偽者として処置致すことは、越前の役儀のおもてとして、出来兼ねまする
大岡越前の独立 (新字新仮名) / 直木三十五(著)
弥次右衛門はその生国しょうこくや姓名を訊いたが、彼はかぶりを振って答えなかった。これも何かの因縁であろうと思ったので、弥次右衛門はその亡骸なきがらの始末をして、自分の菩提寺に葬ってやった。
青蛙堂鬼談 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
……あ。それから今一つ大事な事が御座りまする。念のために御伺い致しまするが、旦那様は、そのお若いお方の讐討あだうちの御免状を御覧になりましたか……それともその讐仇かたき生国しょうこく名前なんどを
斬られたさに (新字新仮名) / 夢野久作(著)