理智りち)” の例文
しかも、この肖像画の成功はその顔に巧みに現わされた自覚した近代的女性に特有な、理智りち的な、精神的な、表情の輝きであると云われていた。
真珠夫人 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
ずあるなら、一般妥当と認められる理智りちの批判に耐え得られぬもの、とでも解するより今のところ仕方もない。
純粋小説論 (新字新仮名) / 横光利一(著)
雷鳴と電光のさすことのはげしくなったことは想像もできないほどである。この家へ雷が落ちそうにも近く鳴った。もう理智りちで物を見る人もなくなっていた。
源氏物語:13 明石 (新字新仮名) / 紫式部(著)
それも明るい貴族的なラファエルよりも、素朴な単純なミレーを好み、理智りち的に円満なダビンチよりも、悲哀と破綻はたんに終ったアンゼロを愛するという具合です。
また作者さくしやが愛を熱心ねつしん宣傳せんでんして居るやうな場合ばあひにでも、寧ろその理智りちを以てことさらにそれを力説りきせつしようとする爲めに、どうかするとその愛は、作者さくしやの心からにじみ出たものではなくて
三作家に就ての感想 (旧字旧仮名) / 南部修太郎(著)
彼は論理に於て尤も強い代りに、心臓の作用に於て尤も弱い男であつた。彼が近来おこれなくなつたのは、まつたあたま御蔭おかげで、はらてる程自分を馬鹿にすることを、理智りちゆるさなくなつたからである。
それから (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
それ故に、人は人間の行為を観察しただけでは、近代人の道徳も分明せず、思考を追求しただけでは、思考という理智りちと、行為の連結力も、洞察することは出来ないのである。
純粋小説論 (新字新仮名) / 横光利一(著)
冷たい理智りちの一面よりお見せにならなかった恨みも言ってみたい気になるのであったが、今は尼であって、いっそう道義的になっておいでになる方にうとましいと思われまいとも考え
源氏物語:12 須磨 (新字新仮名) / 紫式部(著)
寧ろ作者さくしや理智りちといふものがそのうちに一層強くはたらいて居るやうな氣がします。
三作家に就ての感想 (旧字旧仮名) / 南部修太郎(著)
かの子 理智りちから明快に生きる青年と時代のカスをなめてただ軽薄けいはくにその場その場の生活をするのと両方でしょうね。もちろん女性にもそれに適応した型が幾つもの差別で存在してます。
新時代女性問答 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
彼は、その美しい夫人のうちに、如何いかなる男性にも劣らないような、鋭い理智りちと批判とを持った一個の新しい女性、如何なる男性とも、精神的に戦い得るような新しい強い女性を認めたのである。
真珠夫人 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
ただのこと、東宮の御上についてのことなどには信頼あそばされることを、丁寧に感情を隠して告げておよこしになる中宮を、どこまでも理智りちだけをお見せになると源氏は恨んでいた。
源氏物語:10 榊 (新字新仮名) / 紫式部(著)
即ち或作品さくひんでは、例へば、「石にひしがれたる雜草」と云つたやうな作品では、主人公の心持の限界げんかいえて、作者の理智りちがお芝居しばゐをしぎて居る爲めに、その心持がどうしてもうなづけなくなつて來る。
三作家に就ての感想 (旧字旧仮名) / 南部修太郎(著)
それは、日本の近代文明が、はじめて生み出したような美しさと表情を持っていた。明治時代の美人のように、個性のない、人形のような美しさではなかった。その眸は、飽くまでも、理智りちに輝いていた。
真珠夫人 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
理智りち一方の女であって、源氏に対して一度は思い上がった態度に出ても、あまりにわが身知らずのようであるとか思い返してはつまらぬ男と結婚をしてしまったりするのもあったりして
源氏物語:06 末摘花 (新字新仮名) / 紫式部(著)