物思ものおもひ)” の例文
このから、少年せいねんのちいさいむねにはおほきなくろかたまりがおかれました。ねたましさににてうれしく、かなしさににてなつかしい物思ものおもひをおぼえそめたのです。
桜さく島:見知らぬ世界 (新字旧仮名) / 竹久夢二(著)
車中何人なんびとも一語を発しないで、皆な屈托な顔をして物思ものおもひに沈んで居る。御者は今一度強く鞭を加へて喇叭らつぱを吹きたてたのでからだは小なれども強力がうりよくなる北海の健児は大駈おほかけに駈けだした。
空知川の岸辺 (新字旧仮名) / 国木田独歩(著)
「忍ぶれど色ににけり我恋は」と謂ひしはすゐなる物思ものおもひ、予はまた野暮なる物思ものおもひに臆病の色に出でてあをくなりつゝむすぼれかへるを、物や思ふと松川はじめ通学生等に問はるゝたび
妖怪年代記 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
さりながら、毛織物、護謨ごむ藥種店やくしゆてん物思ものおもひ
牧羊神 (旧字旧仮名) / 上田敏(著)
その物思ものおもひやはらかにめぐる夕ぞわりなけれ。
思ひ出:抒情小曲集 (旧字旧仮名) / 北原白秋(著)