牛込見附うしごめみつけ)” の例文
牛込見附うしごめみつけまで来た時、遠くの小石川の森に数点の灯影ひかげを認めた。代助は夕飯ゆうめしを食う考もなく、三千代のいる方角へ向いて歩いて行った。
それから (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
から、彼所あれから牛込見附うしごめみつけへ懸ッて、腹の屈托くったくを口へ出して、折々往来の人を驚かしながら、いつ来るともなく番町へ来て、例の教師の家を訪問おとずれてみた。
浮雲 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
お佐代さんが国から出た年、仲平は小川町に移り、翌年また牛込見附うしごめみつけ外の家を買った。値段はわずか十両である。
安井夫人 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
起きている家は一軒もないが、まだ杜絶とだえない人通りは牛込見附うしごめみつけの近くなるに従っていよいよにぎやかになる。
ひかげの花 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
何でも牛込見附うしごめみつけからかなり行って、四谷よつや見附の辺のお堀端ほりばたから松の枝が往来へ差し出ているのが目につくあたりにお住いだったと思います。痩形で、少し前屈まえかがみの恰好かっこうの静かなお年寄でした。
鴎外の思い出 (新字新仮名) / 小金井喜美子(著)
やがてくれるまでたづねあぐんで、——あかしの茶飯ちやめしあんかけの時刻じこく——神樂坂下かぐらざかした、あの牛込見附うしごめみつけで、顏馴染かほなじみだつた茶飯屋ちやめしやくと、其處そこで……覺束おぼつかないながら一寸ちよつと心當こゝろあたりが付いたのである。
夜釣 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
牛込見附うしごめみつけの青い色
晶子詩篇全集 (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)
古賀精里こがせいり牛込見附うしごめみつけ内の賜邸復原楼を題となすものは遺稿中三首の多きに及んでいる。
下谷叢話 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
強い日が正面から射竦いすくめる様な勢で、代助の顔を打った。代助は歩きながら絶えず眼とまゆを動かした。牛込見附うしごめみつけを這入って、飯田町を抜けて、九段坂下へ出て、昨日寄った古本屋まで来て
それから (新字新仮名) / 夏目漱石(著)