熊鷹くまたか)” の例文
折角きづき上げた大身代を、をひや養女や、赤の他人に、熊鷹くまたかゑさうばはれるやうに滅茶々々にされて了ふのが心外でたまらなかつたのです。
「いや熊鷹くまたかじゃろう。あれは意地むさいでな。だがなあ喜惣、この片身はどうあっても、お前にはやれんぞ。あれは、第一わしあななんじゃ」
白蟻 (新字新仮名) / 小栗虫太郎(著)
一方のすみには熊鷹くまたかのような悪漢フレッドの一群が陣取って何げないふうを装って油断なくにらまえている。
映画雑感(Ⅰ) (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
そういう作法や鄭重ていちょうは、暴客たちにはかえって苦手である。赤いまばらひげの中から、熊鷹くまたかのような眼をひからせている大法師が、を振って、善信の冷静を打ち砕いた。
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
せいたかさが五しゃくすんむねあつさが一しゃくすん巨人おおびとのような大男おおおとこでございました。そして熊鷹くまたかのようなこわい目をして、てつはりえたようなひげがいっぱいかおえていました。
田村将軍 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
皮をがれるやら、鉄のきねかれるやら、油のなべに煮られるやら、毒蛇に脳味噌のうみそを吸われるやら、熊鷹くまたかに眼を食われるやら、——その苦しみを数え立てていては、到底際限がない位
杜子春 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
正義、法律、お金で買えます。良心、貞操、むろんの事だよ。自由民権手段を撰ばず。掴んで離さぬ熊鷹くまたか根性の。億万長者の一流どころが。国の利益は自分の利益と。盤石ばんじゃく動かぬ算盤そろばんずくめで。
ドグラ・マグラ (新字新仮名) / 夢野久作(著)
熊鷹くまたかえさを奪われるように滅茶滅茶にされてしまうのが心外でたまらなかったのです。
「名代の熊鷹くまたかだ、——まさか佐五兵衛に頼まれたんじゃあるまいな」