わずろ)” の例文
うん/\成程此の宿屋に泊って居るうちわずろうてお供さんが…おう/\それはお心細いことで、此の村方へ御送葬ごそう/\になりましたかえ、それは御看経ごかんきんをいたしましょう
菊模様皿山奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
学問勉強とうことになっては、当時世の中に緒方塾生の右に出る者はなかろうと思われるその一例を申せば、私が安政三年の三月、熱病をわずろうてさいわいに全快に及んだが
福翁自伝:02 福翁自伝 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
わずろうている父御ひとりを心安う過ごさせることも出来ようぞと、親切にいうて下されたが……
玉藻の前 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
その、すさまじい行燈でさえが、無聊ぶりょうと、冷遇と、閑却と、無視との間に、何か一応の怨言うらみごとをさしはさんでみようとして、それで何を恐れてか、それを言いわずろうているほどに荒涼なこの一室。
大菩薩峠:27 鈴慕の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
「では、なにをそのように、無用にお心をわずろうておられるのですか」
三国志:08 望蜀の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
其後大酒呑のおかみさんは頓死して店はつぶれ、目ざす家は久さんの家だけになった。が住む家の歴史を知るにつけ、新村入は彼の前に問題として置かれた久さんの家を如何にす可きかと思いわずろうた。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
うか……そうお前に強う云われたらもう是までじゃ、わしもどうせ迷いを起し魔界にちたれば、あくまでもよこしまく、私はこれで別れる、あなたはわずろうている身体で鴻の巣まできなさい
菊模様皿山奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
申しかねましたが、市ヶ谷の親類の者に子供が両人あって、亭主が暫らくわずろうて、別に便たよる者もない、義理ある親類で嘆いて参って、助けてくれぬかと、よんどころなく金子を貸してやらなければなりません
業平文治漂流奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)