-
トップ
>
-
焦土
>
-
せうど
その東京はもう消え
失せたのですから、同じ東京とは云ふものの、
何処か折り合へない感じを与へられてゐました。それが今
焦土に変つたのです。
衆奉じて以て主と爲すべきものなく、或は
散じて四方に
之き、或は
上野に
據る。若し公をして
耐忍の力無く、共に
怒つて事を擧げしめば、則ち府下悉く
焦土と爲らん。
江戸のなごりも、
東京も、その
大抵は
焦土と
成んぬ。
茫々たる
燒野原に、ながき
夜を
鳴きすだく
蟲は、いかに、
蟲は
鳴くであらうか。
私はそれを、
人に
聞くのさへ
憚らるゝ。
鎌倉に
止まれる知友を思ひ、心
頻りに安からず。
薄暮円月堂の帰り報ずるを聞けば、牛込は無事、芝、
焦土と化せりと云ふ。
姉の家、弟の家、共に全焼し去れるならん。