無漸むざん)” の例文
それめたといふのであつたらう、忽ちに手対てむかふ者を討殺うちころし、七八さうの船に積載した財貨三千余端を掠奪し、かよわい妻子を無漸むざんにも斬殺きりころしてしまつたのが、同月十九日の事であつた。
平将門 (新字旧仮名) / 幸田露伴(著)
身に付ゐたるが天神丸の巖石に打付うちつけられし機會はずみはるかの岩の上へ打上られしばし正氣しやうきも有ざりけるやゝときすぎて心付ほつと一いきつきゆめの覺し如くさるにても船は如何せしやとかすかにてら宵月よひづきの光りにすかし見ば廿人の者共は如何にせしや一人もかげだになし無漸むざん鯨魚くぢら餌食ゑじきと成しか其か中にてもわれひとりからくいのちたすかりしは
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)