無態むたい)” の例文
何をいっても耳をかさずに、両手を取って手先の者は、お綱と弦之丞をムリ無態むたいに舟から揚げて、東奉行所へ引っ立てて行こうとする。
鳴門秘帖:04 船路の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「あらかじめたくらんだものと見え、道場の前へ差しかかりますと、ご門弟衆バラバラと立ち出で、無理無態むたいに私を連れ込み、是非にと試合を望みましたれば……」
八ヶ嶽の魔神 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
「どうせあたしゃ無態むたいさ。——この煙草入たばこいれもおまえげるから、とっととかえってもらいたいよ」
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
……それは……それはたった一度……自分も知らない間の過失あやまちです。……腕ぶしのつよい弁馬に強迫されて、無態むたいに気を
御鷹 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
大杯を持って、そのうしろへ坐ったのが、無態むたいに、与平のからだを抱いて、自分のほうへ向け直すと、与平はもう別人のような酔眼を、朦朧もうろうとすえて
梅里先生行状記 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「ははは。そちも武門、そこまでのことが、肚の底に分っていては、無態むたいに、玄蕃を説けぬのもむりはない」
新書太閤記:10 第十分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「エエ、何ぼ何でも、罪もない女中を河へ突き落して、その上こんなご無態むたいは、あんまりでございます」
鳴門秘帖:01 上方の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
世話になっている仁介の眼をしのんで、用心棒の賛之丞と、よくない恋を盗んでいるのを知って、自分が、無態むたいに、力ずくで、連れ出してしまった淫婦なのである。
野槌の百 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
無態むたいなことをおっしゃって下さいますな。この兆二郎の身の上は、師匠もよく御存じでございます」
増長天王 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「ああいう乱暴者のことだから、またどんな無態むたいをいわぬとも限らぬ。拙者がついて行ってやろう」
銀河まつり (新字新仮名) / 吉川英治(著)
二た月ほどついやして、やがて帰ってきた使いの話によると、林冲の妻は、その後も、こう大臣父子の迫害やら、無態むたいな縁組みに迫られて、ついに自害して果て、彼女の父親も
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「たった今、南町奉行所の東儀様や、大勢の捕手が雪崩なだれこんで、無態むたいにひ、ひッ立てて」
牢獄の花嫁 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「兵をひらくな、陣形を取らず、一所にまとめ、まんまると、無態むたいの態にもどせ」
新書太閤記:09 第九分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「ほう、それであの仲間ちゅうげんが、無態むたいにそちを捕えようと致していたのか」
鳴門秘帖:04 船路の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「そ、それは、余りにも、ご無態むたいと申すもので」
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「いや、無態むたいも相なりません。兵どもに聞かれるのは、まだしもですが、そこらの山寺の僧や雑人ぞうにんどもが、はや、何事かと知って、あわれ、北畠ノ源中納言でおわすぞよと、ものめずらに、寄りたかっておりますれば」
私本太平記:05 世の辻の帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「そんな、ご無態むたいな」
私本太平記:04 帝獄帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「あ、ご無態むたいな……」
鳴門秘帖:01 上方の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)