烟出けむだ)” の例文
そこには窓も烟出けむだしもあったが、それらは煉瓦で塗り固められて、すでに多年を経たものであることが明らかに見られた。
すぐうしろの寺の門の屋根やねにはすゞめつばめが絶えなくさへづつてゐるので、其処此処そここゝ製造場せいざうば烟出けむだしが幾本いくほんも立つてゐるにかゝはらず、市街まちからは遠い春の午後ひるすぎ長閑のどけさは充分に心持こゝろもちよくあぢははれた。
すみだ川 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
つづいて、はげしいザーという吹雪が、烟出けむだし窓の障子に当って小さな声は消されてしまった。その後は、しばらく死のような沈黙が来た。老婆は、空耳であってくれればいいというねがいおこった。
凍える女 (新字新仮名) / 小川未明(著)
すぐうしろの寺の門の屋根にはすずめつばめが絶え間なくさえずっているので、其処そこ此処ここに製造場の烟出けむだしが幾本も立っているにかかわらず、市街まちからは遠い春の午後ひるすぎ長閉のどけさは充分に心持よくあじわわれた。
すみだ川 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
その扉はいつでも重そうに堅く閉されていて、細い烟出けむだしが一本ひょろりと立っている低いかわら屋根と、四、五本のせた杉の木立の望まれるほかには、門内には何一つ外から見えるものはない。
監獄署の裏 (新字新仮名) / 永井荷風(著)