游泳ゆうえい)” の例文
春のうららかな日のもとで池の水鳥が羽を並べて游泳ゆうえいをしながらそれぞれにさえずる声なども、常は無関心に見もし、聞きもしておいでになる心に
源氏物語:47 橋姫 (新字新仮名) / 紫式部(著)
無数の真鯉まごい緋鯉ひごいが、ひたひた水の浸して来る手摺てすりの下を苦もなげに游泳ゆうえいしていた。桜豆腐、鳥山葵とりわさ、それに茶碗ちゃわんのようなものが、食卓のうえに並べられた。
仮装人物 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
大尉を驚かせたのは、米艦隊の最上さいじょうの空に、まもがみのように端然たんぜん游泳ゆうえいをつづけていたメーコン号が、一団の火焔となって、焼け墜ちてゆくのを発見したことだった。
空襲葬送曲 (新字新仮名) / 海野十三(著)
もし游泳ゆうえいを学ばないものに泳げと命ずるものがあれば、何人も無理だと思うであろう。もし又ランニングを学ばないものにけろと命ずるものがあれば、やはり理不尽だと思わざるを得まい。
侏儒の言葉 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
また津浪つなみさらはれた場合ばあひおいて、其港灣そのこうわんおく接近せつきんしたところではうしほ差引さしひききゆうであるから、游泳ゆうえいおもふようにかないけれども、港灣こうわん兩翼端りようよくたんちかくにてはかようなことがないから、平常通へいじようどほりにおよられる。
地震の話 (旧字旧仮名) / 今村明恒(著)
巨大な動物のたてがみの様に、物凄く揺れる様々の海草、陸上では想像も出来ない、種々雑多の魚類の游泳ゆうえい、八本の足を車の様に拡げ、不気味ないぼいぼをふくらまして、ガラス板一杯に吸いついた大章魚おおだこ
パノラマ島綺譚 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)