海老錠えびじょう)” の例文
戌刻いつつには潜りの大海老錠えびじょうをおろします。それから先は私が開けにかからなければ、外からは入れないことになって居ります」
路次の奥に、駄菓子屋の裏口と思われる辺に、一枚の開扉ひらきがあって、外から海老錠えびじょうがかかっていた。お清は帯の間から鍵を取出して、それを開いた。
反抗 (新字新仮名) / 豊島与志雄(著)
銅貨の中に隠した針くらいの長さのその鋸で、錠前の閂子かんしや、かきがねの軸や、海老錠えびじょうの柄や、窓についてる鉄棒や、足についてる鉄枷てつかせなどを、切らなければならない。
乾児こぶんにまたいっぷう変ったやつがいて、中でもおもだったのは毛抜けぬきおと阿弥陀あみだの六蔵、駿河するがための三人。一日に四十里しじゅうり歩くとか、毛抜で海老錠えびじょうをはずすとか不思議な芸を持ったやつばかり。
顎十郎捕物帳:13 遠島船 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
とある小屋を見つけて入り込もうとしましたが、意地悪く厳重に海老錠えびじょうが下りておる上、こんな中で、なまじ一方口の小屋に入るのも危険です。
十字架観音 (新字新仮名) / 野村胡堂(著)
アンジョーラは戸に横木を入れ、かけがねをし、錠前と海老錠えびじょうとの二重の締まりをした。その間も、兵士らは銃床尾で工兵らはおので、外部から激しく戸をたたいていた。
「待てよ。囲いの戸へ鍵をおろしたのは、幾太郎じゃないかも知れないな。海老錠えびじょうは鍵がなくったっておろせるんだ」
鉄のかんぬき海老錠えびじょうのきしる音、看守の帯にさがってる鍵束のがちゃつく音、階段の上から下まであわただしい足音、長い廊下の両端から互いに呼び合い答え合う声、などが聞こえた。
死刑囚最後の日 (新字新仮名) / ヴィクトル・ユゴー(著)
大一番の海老錠えびじょうを外して、塗籠ぬりごめの扉を開くと、中は二重の板戸、それは手鍵一つで、わけも無く開きます。
黄金を浴びる女 (新字新仮名) / 野村胡堂(著)
見分けのつかない唐草模様からくさもようの冠頂が変なふうについていて、緑青とこけとがいっぱい生じてる二本の柱にはめ込まれ、ゆがみ揺らめいていて海老錠えびじょうのかかってるその古い鉄門の格子こうし越しに
びた金具に、三つの海老錠えびじょう、その一つ一つが、藤太と市兵衛の煙草入から出た鍵と、お吉の紙入から出た鍵で開くようになっております。平次の手でふたをはねると
けやきの厚板で組んだ、恐ろしく巌丈がんじょうなもので、大一番の海老錠えびじょうおろしてありますが、覗いてみるとよく底が見えて、穴のあいた小銭が五六枚あるだけ、何の変哲もありません。
「え、念のために開けてみようとすると、海老錠えびじょうが抜けていましたよ」
形ばかりですが錆び付いた中形の海老錠えびじょうがおりております。
「大一番の海老錠えびじょうがおりていたそうですよ」