浪費ろうひ)” の例文
いわば依託金いたくきんのごときものであるからして、これを無意味に浪費ろうひしすなわち土芥どかい同然に取り扱うことははなはだしからんこととも言える。
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
大まじめで自分を放蕩者ほうとうものと思いんで、「ああ、もし無駄むだに時を浪費ろうひさえしなかったら、えらいことができたのになあ!」
はつ恋 (新字新仮名) / イワン・ツルゲーネフ(著)
特に今日の如くわが国ユー・エス・エーの戦死者が百万人を単位として数えねばならなくなった折柄おりから、あたら健全なる内臓、筋肉、神経、脳細胞をどんどん燃してしまうというのは浪費ろうひも甚だしく
諜報中継局 (新字新仮名) / 海野十三(著)
別れた二人の男達も、あれでもない、これでもないと云って、金があるとらちもなく自分だけで浪費ろうひしてしまって、食えなくなるとそのウップンを私の体を打擲する事で誤魔化していた。
清貧の書 (新字新仮名) / 林芙美子(著)
だから物を浪費ろうひしないことは大切なことなのだ。但し穀作や何かならばそんなにひどく虫を殺したりもしないのだ。極端きょくたんな例でだけ比較をすればいくらでもこんな変な議論は立つのです。
ビジテリアン大祭 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
「探検だの、室ごとの相談だの、まったく時間の浪費ろうひだよ。塾生活じゅくせいかつの設計だなんていったって、はいって来たばかりのぼくたちに、そんなことができるわけがないじゃないか。ね、そうだろう。」
次郎物語:05 第五部 (新字新仮名) / 下村湖人(著)
これよりグロモフのいえには、不幸ふこう引続ひきつづいててセルゲイの葬式そうしきんだ一週間しゅうかんちちのグロモフは詐欺さぎと、浪費ろうひとのかどもっ裁判さいばんわたされ、もなく監獄かんごく病院びょういんでチブスにかかって死亡しぼうしてしまった。
六号室 (新字新仮名) / アントン・チェーホフ(著)
一身をかえりみてもあるいは他人を見ても、月給が入った、金をもうけたからとて、無駄むだ浪費ろうひをしている人を見ると、彼奴きゃつめ一円取って一円の財布さいふを買っているわいと思う。
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)