法然頭ほうねんあたま)” の例文
町内の若い者、頭分かしらぶん芸妓家げいしゃや待合、料理屋の亭主連、伊勢屋の隠居が法然頭ほうねんあたまに至るまで、この床の持分となるとわきへはかない。
三枚続 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
その異形いぎょうなる法然頭ほうねんあたまの中で何の世界のことを考え、その見えざる眼で、どれだけの色彩を味わい、これのみは異常に発達した聴管のうちに
大菩薩峠:27 鈴慕の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
「いやにでこぼこしているでしょ。こういうのを法然頭ほうねんあたまって云うんだそうだ。子供の頃、お袋から聞いたんですが、思い出したりすると可笑しくて。」
夕張の宿 (新字新仮名) / 小山清(著)
時々、その法然頭ほうねんあたまを左右に振りながら、そうして、せっかくの提灯の中の蝋燭ろうそくが、早や燃え尽きようとするのに、動き出そうともしません。
大菩薩峠:23 他生の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
そのことばわらざるに、車は凸凹路でこぼこみちを踏みて、がたくりんとつまずきぬ。老夫おやじは横様に薙仆なぎたおされて、半ば禿げたる法然頭ほうねんあたまはどっさりと美人の膝にまくらせり。
義血侠血 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
竜之助は、そのころ市中を歩く虚無僧こむそうの姿をして、身には一剣をも帯びておりません。弁信は例のころもを着て、法然頭ほうねんあたま網代笠あじろがさで隠しておりました。
大菩薩峠:19 小名路の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
で、辞退も会釈もさせず、紋着もんつき法然頭ほうねんあたまは、もう屋形船の方へ腰を据えた。
伯爵の釵 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
お喋り坊主はひきつづき、海の中に漂う海月くらげのように、小路こうじの暗いところで法然頭ほうねんあたまを振り立てて
大菩薩峠:20 禹門三級の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
で、辞退も会釈もさせず、紋着もんつき法然頭ほうねんあたまは、う屋形船の方へ腰をゑた。
伯爵の釵 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
例によって、仔細らしく法然頭ほうねんあたまを振り立ててかく言いますと、庵の縁の柱のところに行って、柱の一方にからみついている縄を解いて、それをスルスルと下へ向って引きました。
大菩薩峠:38 農奴の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
と言って弁信は、力なくも足を運ぼうとしましたが、また急に法然頭ほうねんあたまを振り立てて
大菩薩峠:29 年魚市の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
はからずここへ足を踏み込んで、弁信法師はつえを立てて、小首をかしげてしまったのは、湖岸としての感覚と、古城址としての風物が、その法然頭ほうねんあたまの中で混線したからではありません。
大菩薩峠:37 恐山の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
また法然頭ほうねんあたまを左右に振って、杖を路傍の木蔭に立てなければならぬ事態の発生したというのは、そこで、たしかに弁信は、お銀様という人の声でなければならない声を聞いたからです。
大菩薩峠:33 不破の関の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
その自慢(!)の法然頭ほうねんあたまを振り立てるためには、であった方が見栄みばえがする。
大菩薩峠:40 山科の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
身体からだはこうして人並より、ずっと小柄であるのに、頭部のみがすぐれて大き過ぎるせいか、前こごみに歩いていると、身体が頭に引きずられそうで、ことにその頭が法然頭ほうねんあたま——といって、前丘ぜんきゅうは低く
大菩薩峠:18 安房の国の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
ところで、弁信が、はじめて法然頭ほうねんあたまをひねり立てました。
大菩薩峠:38 農奴の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
そう言って例の法然頭ほうねんあたまを左右に振り立てました。
大菩薩峠:18 安房の国の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)