沈思ちんし)” の例文
吾等は信ずる、沈思ちんし熟慮じゅくりょの結果は、必ず汝をして、われ等の主張の合理性を承認せしむるに相違ないと。
典獄は沈思ちんししてそうあろうそうあろう、察し申す、ただこの上は獄則を謹守し、なお無頼ぶらいの女囚を改化遷善の道におもむかしむるよう導き教え、同胞の暗愚を訓誨し
妾の半生涯 (新字新仮名) / 福田英子(著)
学生はしばらく沈思ちんしせり。その間に「年波としなみ」、「八重の潮路しおじ」、「渡守わたしもり」、「心なるらん」などの歌詞うたことばはきれぎれに打誦うちずんぜられき。かれはおのれの名歌を忘却ぼうきゃくしたるなり。
取舵 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
沈思ちんしな一心がすぎると妾は心臓から心臓にかけられた剣の橋を渡っていることを知りました。
バルザックの寝巻姿 (新字新仮名) / 吉行エイスケ(著)
夕べの沈思ちんしはこゝ迄たどりついたので、私は、立ち上り、入口の處へ行つて、秋の入陽を、そして學校と共に村から半マイル離れてゐる私の家の前のひつそりした耕地を眺めた。
二人の沈思ちんしを破つて、平次の女房のお靜は顏を出します。たすきを外して、手紙を取つて、輕く八五郎に目禮し乍ら、何時までも若くて美しいお靜のれた手には、結び文が一つ。
発し長い間黙然と沈思ちんししていた佐助はこの世に生れてから後にも先にもこの沈黙の数分間ほど楽しい時を生きたことがなかった昔悪七兵衛景清あくしちびょうえかげきよ頼朝よりともの器量に感じて復讐の念を
春琴抄 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
沈思ちんし熟考の上起草された原案は、起草委員会において他の二人が如何に反対しても容易に屈することなく、極力原案の維持に努めて、中には或る重要な規定について、数日間討論を行うた末
法窓夜話:02 法窓夜話 (新字新仮名) / 穂積陳重(著)
雁金検事は腕をこまねいて沈思ちんししていたが、課長の入ってくるのを見るなり
恐怖の口笛 (新字新仮名) / 海野十三(著)
じっと何事か沈思ちんしにおちていた丹波、ハタと膝を打って、ニヤリとした。
丹下左膳:03 日光の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
と、依然いぜん沈思ちんしのすがたを守っていた。
黒田如水 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
矢野は沈思ちんししばらくして
廃める (新字新仮名) / 伊藤左千夫(著)
正成は沈思ちんしした。
赤坂城の謀略 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
二人の沈思ちんしを破って、平次の女房のお静は顔を出します。たすきをはずして、手拭を取って、軽く八五郎に目礼しながら、いまでも若くて美しいお静のれた手には、結び文が一つ。
これも沈思ちんしの時の癖で、越州えっしゅうはしきりに爪を噛んでいるのだ。
魔像:新版大岡政談 (新字新仮名) / 林不忘(著)