気張きば)” の例文
しかし今年の正月にはどうあっても胡弓弾きにゆくと、一月ひとつきも前から木之助は気張きばっていた。味噌屋の御主人にすまんからといった。
最後の胡弓弾き (新字新仮名) / 新美南吉(著)
「この胴裏じゃ表が泣く、最少もすこ気張きばればかった」というと「何故なぜ、昔から羽織の裏は甲斐機にきまってるじゃないか、」
二葉亭余談 (新字新仮名) / 内田魯庵(著)
と当って見ると、いやつまんだつめの方が黄色いくらいでござったに、しょうのものとて争われぬ、七りょうならば引替ひきかえにと言うのを、もッと気張きばってくれさっせえで
春昼 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
もう少し奮発して気張きばる事さえ覚えれば、当ってもはずれても、今よりはまだ痛快に生きて行かれるのに、今日こんにちまでついぞそこに心を用いる事をしなかったのである。
彼岸過迄 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
葉子は倉地の最後の一言ひとことでその急所に触れられたのだった。葉子は倉地の目の前で見る見るしおれてしまった。泣くまいと気張きばりながら幾度も雄々おおしく涙を飲んだ。
或る女:2(後編) (新字新仮名) / 有島武郎(著)
うむ……と気張きばって、立ち止まってにらめっこをします。が誰も笑い出すものがありません。でまたぐるぐる踊り廻って、「だるまさん、だるまさん」をくり返します。
天狗笑 (新字新仮名) / 豊島与志雄(著)
お前もこのわしの目的をよくのみこんで、どうか、わしが目的を遂げられる様気張きばってくれ
俗臭 (新字新仮名) / 織田作之助(著)
「そりゃまあ、なんでがすか、せめてもう二カペーカだけ気張きばっておくんなさいよ。」
いまは苦悶くもんの力もつきはてて、目に気張きばりの色も消えてしまった。
老獣医 (新字新仮名) / 伊藤左千夫(著)