気嫌きげん)” の例文
旧字:氣嫌
私は聞いて呆れながら、お宮は、私がそんなにして女の気嫌きげんを取るほど惚れていると自惚うぬぼれているのだろうかと思って柳沢の顔を見た。
うつり香 (新字新仮名) / 近松秋江(著)
母に話すと母は大変気嫌きげんを悪くしますから、成るべく知らん顔して居たほうがいんですよ。御覧なさい全然まるで狂気きちがいでしょう。
運命論者 (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
雪は気嫌きげんを直した。私たちは、山の頂きにたどりついた。すぐ足もとから百丈もの断崖になっていて、深い朝霧の奥底に海がゆらゆらうごいていた。
断崖の錯覚 (新字新仮名) / 太宰治黒木舜平(著)
「あゝゐた/\。有難い/\。もうお前たち無暗むやみとあるきまはるのではないよ。もしわしが寝返りでもした時、つぶされるといけないからね。」と、いゝ気嫌きげんになつた孫の巨人は
漁師の冒険 (新字旧仮名) / 宮原晃一郎(著)
テン太郎 けふ おとうさんは気嫌きげんわるいんぢや
学校から帰るとすぐに先生の宅へ駆けつける、老人と孫娘の愛子はいつも気嫌きげんよく僕を迎えてくれる。
初恋 (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
「きょうは、ね、遊びに来たんだ。死ぬほど酒を呑んでみたいんだ。だから、部屋なんか、どうだって、いいんだ。」笠井さんは、やはり少し気嫌きげんを直して、快活な口調で言った。
八十八夜 (新字新仮名) / 太宰治(著)
叔父さんが僕のおとっさんになった、僕はその後何度いくどもおともをして猟に行ったが、岩烏を見つけるとソッと石を拾って追ってくれた、義父おとっさんが見ると気嫌きげんを悪くするから。
鹿狩り (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
然し晩になると大概校長さんが来ますからその時だけは幾干いくら気嫌きげんえだが校長さんも感心に如何いくらなんと言われても逆からわないで温和おとなしゅうしているもんだから何時いつか老先生も少しは機嫌が可くなるだ……
富岡先生 (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
母はそろそろ気嫌きげんを改ためて
酒中日記 (新字新仮名) / 国木田独歩(著)