死方しにかた)” の例文
私のこの異常な死方しにかたの裏面に隠されている、或る驚くべく、恐るべき秘密を看破して下さるのを一刻千秋の思いで待っていたのです。
暗黒公使 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
ところが、それから間もなく、左様、ひと月も経った頃でしょうか、今度は灯台長の川村という老人が、全く同じような死方しにかたをしたのです
廃灯台の怪鳥 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
誰もかもが獨特な死方しにかたをしてゐるのだ。男達の中には、甲冑の下に奧深く、あたかも囚人のやうに、その死を閉ぢこめて置いた者もあつた。
その友人達が詮議せんぎをしていると、早稲田の某空家の中に原因の判らない死方しにかたをして死んでいたと云う記事が、ある日の新聞に短く載っていた。
蟇の血 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
それも普通の死方しにかたではなく、世にも不思議な殺人事件の被害者として、無残にこの世を去ってしまったからである。
孤島の鬼 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
不意をかれたのか、わしの質問が意外だったのかはわからぬが、杉山はきょとんとして訊き返した。わしにして見れば、そんな死方しにかたをした娘に未練はないという強い気持が見せたかった。
(新字新仮名) / 富田常雄(著)
(立派な死方しにかたをした、しかし随分憎らしい記憶をおいていってくれた人だ)
松井須磨子 (新字新仮名) / 長谷川時雨(著)
死者もその間は死恥しにはぢをさらさぬ譯にはゆかぬし、死者の遺族などは重々困難の立場に立つ譯だ。自殺は人の勝手のやうなものだが、華嚴飛び込くらゐ智慧の無い、後腐あとぐされの多い、下らない死方しにかたは無い。
華厳滝 (旧字旧仮名) / 幸田露伴(著)
そして結局けっきょくんでもない死方しにかた——自殺じさつげてしまったのでした。
たれ様の御次男も、さすがによい死方しにかたをなされたそうな。
上杉謙信 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
……私のこの異状な、不自然な、奇抜な死方しにかたをもっともっとよく研究して下さい。そうして私の死を無駄にしないようにして下さい。どうぞどうぞお願いします……。
暗黒公使 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
「ああ、そう云やあ、葛西の大旦那は、裏のやぶの中で、わけの判らない死方しにかたをしてたよ」
赤い花 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)