檜垣ひがき)” の例文
寺記によると、平安朝以前からの開基と、伝えられ、檜垣ひがきおうななる伝説の人が、国守清原元輔の頃、ここに観世音をまつって以来のものといわれている。
随筆 宮本武蔵 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
上野介の居間がどのへんにあるかは、もとより知る由もない。が、左手に見える檜垣ひがきの蔭には泉水でもあるらしく、ぼちゃんと鯉の跳ねる音も聞えてきた。
四十八人目 (新字新仮名) / 森田草平(著)
或日さる方の御邸で名高い檜垣ひがき巫女みこ御靈ごりやういて、恐しい御託宣があつた時も、あの男は空耳そらみゝを走らせながら、有合せた筆と墨とで、その巫女みこの物凄い顏を
地獄変 (旧字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
こういう疲れ方は他の疲れとは違っていやし様のない袋小路のどんづまりという感じである。世阿弥が佐渡へ流刑のあいだに創った謡曲に「檜垣ひがき」というものがある。
青春論 (新字新仮名) / 坂口安吾(著)
第九「青貝の間」は十七畳、第十「檜垣ひがきの間」は檜垣の襖、第十一「緞子どんすの間」は緞子を張りつめる。
新しい檜垣ひがきを外囲いにして、建物の前のほうは上げ格子こうしを四、五間ずっと上げ渡した高窓式になっていて、新しく白いすだれを掛け、そこからは若いきれいな感じのする額を並べて
源氏物語:04 夕顔 (新字新仮名) / 紫式部(著)
一二回会ったくらいで顔もうろ覚えになっている檜垣ひがきをたよってきたんだが、そして着くなりそのまま檜垣の家に厄介やっかいになっていたが、檜垣の家は伊豆七島屈指くっしの海産物問屋で
石ころ路 (新字新仮名) / 田畑修一郎(著)
烏羽玉うばたまのわが黒髪は白川の、みつはくむまで老いにけるかな」(大和物語)という檜垣ひがきおうなの歌物語も、瑞歯含ミヅハクむだけはわかっても、水は汲むの方が「老いにけるかな」にしっくりせぬ。
水の女 (新字新仮名) / 折口信夫(著)
軒には品のいい半蔀はじとみを釣るんだ。……家のまわりには檜垣ひがきをめぐらしてもいい。それから、小ざっぱりした中庭を作ろう。切懸きりかけのような板囲いで仕切って、そいつには青々とした蔓草つるくさわせるんだ。
なよたけ (新字新仮名) / 加藤道夫(著)
或日さる方の御邸で名高い檜垣ひがき巫女みこ御霊ごりやういて、恐しい御託宣があつた時も、あの男は空耳そらみゝを走らせながら、有合せた筆と墨とで、その巫女の物凄い顔を
地獄変 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
僕は「檜垣ひがき」を世界一流の文学だと思っているが、能の舞台を見たいとは思わない。
日本文化私観 (新字新仮名) / 坂口安吾(著)
で、なお、狭い露地へまで入って行こうとすると、低い檜垣ひがきの蔭から
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
わたしの寝る部屋へやは、あの大路面おおじめん檜垣ひがきのすぐそばなんですが、ゆうべその檜垣ひがきの外で、きっと盗人でしょう、五六人の男が、あなたの所へはいる相談をしているのが聞こえました。
偸盗 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)