横着者おうちゃくもの)” の例文
知らざるにあらずしかるにいかにも忠義らしく装いながら主人の体をもって歯を冷やすとは大それた横着者おうちゃくものかなその心底にくさも憎しと。
春琴抄 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
の春見は清水助右衞門のせがれ重二郎がいう通り、利子まで添えて三千円の金を返したのは、横着者おうちゃくものながら、どうか此の事を内聞ないぶんにして貰いたいと
彼は中々の横着者おうちゃくもので、最初はじめ兎角とかくに自分の素性来歴を包もうと企てたが、要するにれは彼の不利益におわった。
飛騨の怪談 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
そして、くもは、横着者おうちゃくものであって、かや、はえがこないときは、もとのほうかくれてねむっていました。
くもと草 (新字新仮名) / 小川未明(著)
海で悩んだ病気はおかへ上ると、横着者おうちゃくものみたようになおってしまいました。二日も床に親しんだお君は、もうほとんど常の身体からだと言ってもよいくらいになってしまいました。
大菩薩峠:07 東海道の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
「手をあげろ。横着者おうちゃくものめ」と、はげしいしかり声が、入口の方からひびいた。いつの間にか黄竜の幕をかきわけ、四馬頭目の巨体きょたいが、長袖ながそでから愛用の毒棒どくぼうをつきだしている。
少年探偵長 (新字新仮名) / 海野十三(著)
あいついかに横着者おうちゃくものとはいえ、まだ子供は子供、きっと独楽をもどしてしさに、なにもかもしゃべりだすにちがいない——と考えたので、大人おとなげないが、横合よこあいからさらってきた
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
今日君のお名吟めいぎんは恐れ入りましたな、なんとか申したな、えゝと「煙草には燧火すりびのむまし梅のなか」とは感服々々、僕などのような横着者おうちゃくものは出る句も矢張り横着で「梅ほめてまぎらかしけり門違かどちがい」
横着者おうちゃくものめ。そして博士が到着しないと分ると、そこで初めて目黒へ駆けつけた。そのときはもう後の祭だ。博士はもの言わぬ人となって目白署へ収容され……そうだ、まだ貴様にいうことがあった。
鞄らしくない鞄 (新字新仮名) / 海野十三(著)
横着者おうちゃくものでございますからぐに羽織を脱いでそれへ出てまいり。