横撫よこな)” の例文
顔は蒼黒く、筋がたるんで、唇の端からよだれが垂れるのを、ときどき思いだしたように、右手の甲で横撫よこなでにしていた。
五瓣の椿 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
顔つきが非常にかわいくて、まゆのほのかに伸びたところ、子供らしく自然に髪が横撫よこなでになっている額にも髪の性質にも、すぐれた美がひそんでいると見えた。
源氏物語:05 若紫 (新字新仮名) / 紫式部(著)
……石頭いしあたまかどのある、大出額おほおでこで、くちさかさのへのに、饒舌おしやべりをムツと揉堪もみこたへ、横撫よこなでがくせ鼻頭はなさきをひこつかせて、こいつ、日暮里につぽりけむりより、何處どこかのうなぎぎさうな、團栗眼どんぐりまなこがキヨロリとひかつて
松の葉 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
孫六は額に浮いた冷汗をツルリと横撫よこなでにしました。
銭形平次捕物控:130 仏敵 (旧字旧仮名) / 野村胡堂(著)
「蒸気河岸がしの先生だ」と一人が他の者に囁き、それからはな横撫よこなでにして私を見あげた、「——なんてっただえ」
青べか物語 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
「蒸気河岸がしの先生だ」と一人が他の者にささやき、それからはな横撫よこなでにして私を見あげた、「——なんてっただえ」
青べか物語 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
「なんだ、しめさばじゃないか」父親は鼻をうごめかし、唇を手で横撫よこなでにして云った、「これはおまえ塩と酢でしめてあるんだ、これはきみ生ま物じゃないよ」
季節のない街 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)