おうち)” の例文
獄中にあった北条残党の武士は、毎日のように曳き出しては首を斬り、六条獄門外のおうちの木の根に大きな穴をほって、樗のこえにしてしまった。
宗盛親子の首は、二十三日、京に着いて、三条通りを西へ、東洞院へ引き廻してから、おうちの木に掛けて獄門にさらした。
女が駿河路にかかったときには花後のおうちの空に、ほととぎす鳴きわたり、らずとも草あやめの色は、裳に露で染った。
富士 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
石磈道いしころみちを向うへ切って、おうちの花が咲重さきかさなりつつ、屋根ぐるみ引傾ひっかたむいた、日陰の小屋へくぐるように入った、が、今度は経肩衣を引脱ひきぬいで、小脇に絞って取って返した。
栃の実 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
どうせ一度はおうちこずえに、懸ける首と思っていますから、どうか極刑ごっけいに遇わせて下さい。(昂然こうぜんたる態度)
藪の中 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
上には屋根が無いが、おうちの木が多く植えてあって、それでいくらか炎日を避けることは出来た。雨天は武場は休みであった。私の入門した頃はもう寒い頃であった。
鳴雪自叙伝 (新字新仮名) / 内藤鳴雪(著)
原の入口に大きなおうちの樹があって、暑い日ざかりはここが二人の休憩場やすみばになっている。
菖蒲しょうぶ重ねのあこめ薄藍うすあい色の上着を着たのが西の対の童女であった。上品に物馴ものなれたのが四人来ていた。下仕えはおうちの花の色のぼかしの撫子なでしこ色の服、若葉色の唐衣からぎぬなどを装うていた。
源氏物語:25 蛍 (新字新仮名) / 紫式部(著)
賀茂の競馬を見に行ったら、おうちの木に坊主が上って、木のまたのところで見物していた。木につかまりながら眠りこけて、落ちそうになるかと思うと、ハッと目をさましてまた眠り出す。
古句を観る (新字新仮名) / 柴田宵曲(著)
都の東獄の門前にあるおうちの木にけられました
源頼朝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
おうちの木を見に行ったか」
源頼朝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)