梵語ぼんご)” の例文
しかしその梵語ぼんごの経文を訳した方々かたがたは決して嘘をつかれるような方でないからして、これには何か研究すべき事があるであろう。
チベット旅行記 (新字新仮名) / 河口慧海(著)
ヒマラヤは梵語ぼんご「雪あるところ」という意義であるそうで、そこから「雪山」という漢訳語も、起因しているのである。
高山の雪 (新字新仮名) / 小島烏水(著)
ところで、なにゆえに「涅槃さとり」のことを「滅」というかというに、元来「涅槃ねはん」の梵語ぼんごは、ニイルヴァーナで、「吹き消す」という意味なのです。
般若心経講義 (新字新仮名) / 高神覚昇(著)
すなわち漢語(または梵語ぼんご)にはあったけれども、普通の国語の音としてはなかったので、インとはいわず
駒のいななき (新字新仮名) / 橋本進吉(著)
秋の彼岸ひがんごろに花咲くゆえヒガンバナと呼ばれるが、一般的にはマンジュシャゲの名で通っている。そしてこの名は梵語ぼんご曼珠沙まんじゅしゃから来たものだといわれる。
植物知識 (新字新仮名) / 牧野富太郎(著)
禅は梵語ぼんご禅那ぜんな(Dhyana)から出た名であってその意味は静慮じょうりょである。精進しょうじん静慮することによって、自性了解じしょうりょうげの極致に達することができると禅は主張する。
茶の本:04 茶の本 (新字新仮名) / 岡倉天心岡倉覚三(著)
梵語ぼんごやパーリ語も心得て、西洋の哲学もわきまえて、西洋式の印度インド哲学に通じた大先生の一人でありましたが、チンプンカンプンで、適確なことはまるで分りません。
戦後文章論 (新字新仮名) / 坂口安吾(著)
これは一理あるようであるが、漢語や梵語ぼんごの輸入された時代の日本と現代の日本との文化の程度の相違ということを考慮に入れるならば決して一律には論じられないと思う。
外来語所感 (新字新仮名) / 九鬼周造(著)
悪業といふは、悪は悪いぢゃ、ごふとは梵語ぼんごでカルマというて、すべて過去になしたることのまだむくいとなってあらはれぬを業といふ、善業悪業あるぢゃ。こゝでは悪業といふ。
二十六夜 (新字旧仮名) / 宮沢賢治(著)
これにもまた唱え言がある。すなわち、梵語ぼんごの言で「あびらうんけんそわか」という語を唱えるのであります。また、目に物が入ったときは、おもしろいマジナイがあります。
妖怪学一斑 (新字新仮名) / 井上円了(著)
第三は、梵語ぼんごで花酔境と訳される。そこは、遠くからみれば大乳海を呈し、はいれば、たちこめる花香のなかで生きながら涅槃ねはんに入るという、ラマ僧があこがれる理想郷ユートピアである。
人外魔境:01 有尾人 (新字新仮名) / 小栗虫太郎(著)
梵語ぼんご ātman は「精神」であり「自己」である。「たま」は top に通じる。
言葉の不思議 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
はじめ日本人が梵語ぼんごであろうと取ったところの、つまり、それほど自家化している、英吉利旦那イギリスだんなのことばを、例のうす眠たい東洋的表現とともに、ふわりと、じつにふわありと投げかけた。
ヤトラカン・サミ博士の椅子 (新字新仮名) / 牧逸馬(著)
梵語ぼんごだろうという者もあるし、出羽国でわのくにの山の奥の方言で、こんにちはごきげんはいかが、という意味だという者もあるんで、……あの和尚はふだんいろいろな土地の方言をごた混ぜに使っていたし
百足ちがい (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
梵語ぼんご研究の手ほどきをして貰った。
かのように (新字新仮名) / 森鴎外(著)
これはほんに梵語ぼんごの母音である、チベット〔語〕の母音は確かに五字である、といって大いに恥じて断りをいいました。
チベット旅行記 (新字新仮名) / 河口慧海(著)
悪業というは、悪は悪いじゃ、ごうとは梵語ぼんごでカルマというて、すべて過去になしたることのまだむくいとなってあらわれぬを業という、善業悪業あるじゃ。ここでは悪業という。
二十六夜 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
彼は仏教の学者になって、一生研究に没入したいと思い、特に西洋へ渡って、日本ではまだ未開拓の梵語ぼんごやパリー語を学び、原典について究理したいと欲していたのだそうだ。
梵語ぼんご udadhi(海)が単数四格で終わりにmがつけば「ワダツミ」に近づく。
言葉の不思議 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
梵語ぼんごの原典では、「罣礙けいげなし」という所は「ひっかかりなしに動き得る」とありますが、何物にも拘束されず、とらわれず、スムースに、自由に働き得ることが、すなわち「罣礙なし」ということです。
般若心経講義 (新字新仮名) / 高神覚昇(著)
やはり彼も、チェコ人で梵語ぼんご学者である。
人外魔境:03 天母峰 (新字新仮名) / 小栗虫太郎(著)
既にインドで拵えられたサンスクリット語(梵語ぼんご)の経典および翻訳書籍も大分チベットに存在して居る。
チベット旅行記 (新字新仮名) / 河口慧海(著)
梵語ぼんご巴利パーリ語の講座であった。ところが栗栖按吉が何より情熱傾けてこの講座へせっせと通う。調べてみると、一日に七八時間も文法書をひっくりかえしたり辞書をめくっているという話なのである。
勉強記 (新字新仮名) / 坂口安吾(著)
露語の zima は霜(シモ)や寒(サム)や梵語ぼんごの hima(雪)やラテンの hiems(冬)やギリシアの cheimon(冬)やまたペルシア語の sarmai(寒い)にも似ている。
言葉の不思議 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)