梗概こうがい)” の例文
翌日になると自分の店で、新聞にのってる演説の梗概こうがいを熟読し、自分のためにまた小僧のために高々と読み返した。
海洋に関する物理的事項のおもなるものについては近頃出版した拙著『海の物理学』にその梗概こうがいを述べておいた。
物理学の応用について (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
大体の筋さえ通れば勝手に省略したり刪潤さんじゅんしたり、甚だしきは全く原文を離れて梗概こうがいを祖述したものであった。
二葉亭四迷の一生 (新字新仮名) / 内田魯庵(著)
ただいま本社の人が明日の新聞に出すんだから、講演の梗概こうがいを二十行ばかりにつづめて書けという注文でしたが、それは書けないと言って断ったくらいです。
道楽と職業 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
海外通信にはシナ領土内における日露にちろの経済的関係を説いたチリコフ伯の演説の梗概こうがいなどが見えていた。
或る女:2(後編) (新字新仮名) / 有島武郎(著)
いいかえれば人間というものは長い家族史の梗概こうがいのようなものなので、いったい阪井の先祖にどういう大悪党がいたのか調べてみたい衝動を感じたほど猛烈なものでした。
ハムレット (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
ほんの梗概こうがいだけしか解っていない過去を嗅ぎ出そうとして、油断なく神経を働かしているのだったが、過去どころか、現在の彼女の生活の裏さえ全く未知の世界であった。
仮装人物 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
その時代の書店の店頭に、西洋美術の梗概こうがいをだも記した書物があろうはずがありません。
大菩薩峠:24 流転の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
人間精神の傑作としてラシーヌの三つの悲劇を梗概こうがいしモリエールの喜劇はただ一つしか梗概してないのを見ると、よほどの愚人が書いたものに違いない、と彼はその時考えていた。
これが牡丹燈籠の原話げんわ梗概こうがいであるが、この原話は寛文かんぷん六年になって、浅井了意あさいりょういのお伽婢子とぎぼうこの中へ飜案ほんあんせられて日本の物語となり、それから有名な円朝の牡丹燈籠となったものである。
牡丹灯籠 牡丹灯記 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
この長賦の梗概こうがいは大正三年二月十日の『日本及日本人』、猪狩史山氏の「ラーマ王物語」を見て知るべし、余も同年八月の『考古学雑誌』に「古き和漢書に見えたるラーマ王物語」を載せた。
自分は当時、大正十二年「改造」新年号にこれを発表するため、筆を急ぎ、また枚数なども雑誌のおのずからな制限につい縛られ、終わりの方は、ほとんど梗概こうがい風な書き方になってしまった。
前編に大体の伝記を述べて、後編に研究の梗概こうがいを叙することにした。
私は手短かに『影』の梗概こうがいを話した。
(新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
先生にその梗概こうがいを聞いてみると、オルノーコという黒ん坊の王族が英国の船長にだまされて、奴隷どれいに売られて、非常に難儀をする事が書いてあるのだそうだ。
三四郎 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
その後に私は友人安倍能成あべよししげ君の「西洋哲学史」を読んで、ロイキッポス、デモクリトス、エピクロスを経てルクレチウスに伝わった元子論の梗概こうがいや、その説の哲学的の意義
ルクレチウスと科学 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
殊に小説の梗概こうがいでも語らせると、多少の身振みぶり声色こわいろを交えて人物を眼前めのまえ躍出おどりださせるほど頗る巧みを究めた。二葉亭が人を心服さしたのは半ばこの巧妙なる座談の力があった。
二葉亭余談 (新字新仮名) / 内田魯庵(著)
それに翻訳物も彼女はかなり読んでいて、話上手な薄いくちびるから、彼女なりに色づけられたそれらの作品の梗概こうがいくことも、読むのを億劫おっくうにしがちな庸三には、興味ある日常であった。
仮装人物 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
「じゃなるべく少しにしようじゃないか」と断って置いて、符号マークの附けてある所だけを見た。代助はその書物の梗概こうがいさえ聞く勇気がなかった。相談を受けた部分にも曖昧あいまいな所は沢山あった。
それから (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
その男が刀を抜いて、輿を突き返したのと斬り合いを始めた。——三四郎にはなんのことかまるでわからない。もっとも与次郎から梗概こうがいを聞いたことはある。けれどもいいかげんに聞いていた。
三四郎 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)