桁外けたはず)” の例文
一つは彼の腕前が桁外けたはずれになったこと、もう一つは彼の気質である。摘要すると、剣術でも柔術でも、極めて無作為であって無類に強い。
雨あがる (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
桁外けたはずれの点、常軌を逸している点などで「発狂事件」と命名するより外に他に妥当なる名前のつけ方がないことが、誰にも首肯されるに至った。
地球発狂事件 (新字新仮名) / 海野十三丘丘十郎(著)
「明治大正昭和にわたって、こんな桁外けたはずれの男がほんの少しばかり国家に尽したということをいささか後世へ伝えたいと思ってな」
ガラマサどん (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
逸作は、こういう桁外けたはずれの企てには興味さえかす男であった。「外遊を一年も延ばしたらその位の金は生み出せる」
雛妓 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
といっても、前後の比例が桁外けたはずれなること、道庵先生と米友公の如きではなく、先なるは人並よりやや優れた体格であって、後ろのは世間並みという程度のものだ。
大菩薩峠:40 山科の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
……しかも、そんな大きな事実に二十年もの永い間、気付かないで、コンナ桁外けたはずれの研究に黒煙くろけむりを立て続けて来た吾輩のアホラシサが、今更にシミジミとわかって来たからサ。
ドグラ・マグラ (新字新仮名) / 夢野久作(著)
子貢しこう子張輩しちょうはいは、顔淵がんえんに対する・師の桁外けたはずれの打込み方に、どうしてもこの感情を禁じ得ないらしいが。)子路は年齢が違い過ぎてもいるし、それに元来そんな事にこだわらぬたちでもあったから。
弟子 (新字新仮名) / 中島敦(著)
平次もさすがにきもをつぶした様子です。話があまりにも桁外けたはずれです。
「それがどうも、すこし、桁外けたはずれな話なんで。……あなたは、ひちくどいことはお嫌いだから、手っとりばやくもうしますが……じつは、このごろ御府内で、妙なことがはじまっているんでございます」
やけになって非道なことをする人間は、才知に欠けているだけにそのやりかたも桁外けたはずれになりがちだ、それは保本もずいぶん見て来たことだろう
そうかと云って、いくら吾が飛行機の優秀を見積り、兵員の技能を過信してもこの比率は、あまりに桁外けたはずれすぎる。そこで問題の解答は、こうだ。
空襲葬送曲 (新字新仮名) / 海野十三(著)
是等は皆その当時の村の畸人きじんの一部であるけれども、今ではこういった様な桁外けたはずれの人間はすっかり影をひそめてしまって、製造した様な人間のみ多くなってしまった
ガラッ八の持って来た話は、あまりにも桁外けたはずれでした。
それだけならさして驚くほどのことではないかもしれない、人間の云うことや行動は、かなり桁外けたはずれにみえても、たいていどこかでつじつまが合っているものだ。
季節のない街 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
平次の言うのがあまりにも桁外けたはずれです。
乳母の云うとおり、なにしろすばしっこいのと桁外けたはずれなことばかりするので、まわりの者のおちつく暇がなかった。そのなかの一つに「梅干のたね」というのがある。
桑の木物語 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
「御身分高き方がたには思いもよらぬような、桁外けたはずれな話しが世間にはいろいろとございます、お骨休めにもなればと存じまして、二三御披露つかまつりたいのですが」
「貴方はまだ御存じないでしょうが、部落の中には桁外けたはずれな人間がいます」と岡村が云った
ちくしょう谷 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
殿はこれまでにもかなり桁外けたはずれな御経験をなさいました、——庶民と同じ姿になって、浅草の見世物もごらんになり、大川へ舟を出して、自由に泳ぎもし釣りもあそばしました
桑の木物語 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
我儘わがままな性分なのか、酔っているのか、それともなにか感情を隠すためか、その夜のおつるの態度は桁外けたはずれに衝動的で、栄三郎には扱いかねるようであったが、その言葉や動作には
扇野 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
江戸は言葉がぞんざいなことは知っているがおまえのは桁外けたはずれじゃないか、ふざけた糸瓜だ、晩飯を食わせる、蒟蒻玉頑てき頓痴気、とうてい武士の口にすべきたぐいの語彙ごいではない
評釈勘忍記 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
「そうだろうがね」相沢は福田くんの顔を、仔細しさいに眺めながら云った、「それにしてもさ、男が外へとび出して、中にいる女房に外から出ていけーってどなるのは、ちょっと桁外けたはずれじゃあねえかな」
季節のない街 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
幾ら昌平の世でも桁外けたはずれである。
風流化物屋敷 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)