根太ねぶと)” の例文
四月になったから大きな声をして時鳥がくというのは表面の意味で、そのうらには「うずき来て根太ねぶと」——ねぶとは腫物はれもの——という滑稽こっけいが含まれています。
俳句とはどんなものか (新字新仮名) / 高浜虚子(著)
主人は腰の辺に俗にいう根太ねぶとの大きなのが次々に出来て、そのために熱も出たのでした。私はそんな手紙は出しませんが、細大漏らさずにいい送る母から聞かれたのでしょう。
鴎外の思い出 (新字新仮名) / 小金井喜美子(著)
それはそのわたくしが懇意にいたします近辺に医者がございまして、その医者がどうも其の薬を……薬は一体毒なもので、ようちょう根太ねぶと腫物はれもののようなものにけます、膏薬吸出しのようなものは
菊模様皿山奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
初手しよてわかをとこばかりにいたが、段々だん/″\老人としよりにもおよぼして、のちには婦人をんな病人びやうにんもこれでなほる、なほらぬまでも苦痛いたみうすらぐ、根太ねぶとうみつてすさへ、びた小刀こがたな引裂ひツさ医者殿いしやどの腕前うでまへぢや
高野聖 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
疣多き根太ねぶとたけのこその根掘り紫ふかき畑にほふり出す
風隠集 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
根太ねぶとから先へ名乗や草すまひ 范孚
古句を観る (新字新仮名) / 柴田宵曲(著)
初手しょては若い男ばかりに利いたが、だんだん老人としよりにも及ぼして、後には婦人おんなの病人もこれでなおる、復らぬまでも苦痛いたみが薄らぐ、根太ねぶとうみを切って出すさえ、びた小刀で引裂ひっさく医者殿が腕前じゃ
高野聖 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)