曙染あけぼのぞめ)” の例文
お茶の用意をした部屋には、お由利が抱きしめてゐたといふ曙染あけぼのぞめの振袖がそのまゝにしてあり、其處には血潮の跡もありません。
銭形平次捕物控:239 群盗 (旧字旧仮名) / 野村胡堂(著)
「おかけは召ていないが、お振袖で、曙染あけぼのぞめで、それはそれは奇麗ですよ、お前さんに見せたいね。ほんと! 桜の花よりものいう花がきれいさ。」
曙染あけぼのぞめの小袖に、細身の大小をさし、髪はたぶさい、前髪にはむらさきの布をかけ、更にその上へ青い藺笠いがさかぶって顔をつつみ、丁字屋の湯女ゆなたちにも羞恥はにかましそうに
江戸三国志 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
やがて出来上ったお雪ちゃんのよそおいは、結綿ゆいわたの島田に、紫縮緬の曙染あけぼのぞめの大振袖という、目もさめるばかりの豪華版でありました。この姿で山駕籠やまかごに揺られて行くと、山駕籠が宝恵駕籠ほえかごに見えます。
大菩薩峠:38 農奴の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
自身みずから八歳やついもと五歳いつつ(そのころは片言まじりの、今はあの通り大きくなりけるよ)桜模様の曙染あけぼのぞめ、二人そろうて美しと父上にほめられてうれしく、われは右妹は左母上を中に、馬車をきしらして
小説 不如帰  (新字新仮名) / 徳冨蘆花(著)
前髮立の美少年、曙染あけぼのぞめの振袖、精好のはかま、短かいのを前半に差して、紫足袋、さながら繪に描いたやうです。
銭形平次捕物控:239 群盗 (旧字旧仮名) / 野村胡堂(著)
稚子輪ちごわに結った髪も、曙染あけぼのぞめたもとも、金糸きんしぬいも、紫濃むらごはかまも、みんなおそろいであったが、元より山家の生ればかりなので、その袂で汗は拭く鼻くそはこする、せっかく化粧して貰った白粉も、まゆずみ
源頼朝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
前髪立の美少年、曙染あけぼのぞめの振袖、精巧せいごの袴、短いのを前半に差して、紫足袋、さながら絵に描いたようです。
銭形平次捕物控:239 群盗 (新字新仮名) / 野村胡堂(著)
蔵前くらまえふうの丸曲髷まるわまげに、曙染あけぼのぞめ被布ひふをきて、手に小風呂敷をかかえている——、で、二、三日前とは、すっかり服装したくが違っているので、ヒョイと見違えてしまうけれど、それはまぎれもないお綱の変身。
鳴門秘帖:02 江戸の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「そのお孃さんが、曙染あけぼのぞめの振袖を、抱きしめたまゝ、眠つてゐたといふのも、變な話ぢやありませんか」
銭形平次捕物控:239 群盗 (旧字旧仮名) / 野村胡堂(著)
曙染あけぼのぞめのりっぱな小袖、精好せいごうはかま、青じろい顔をキッとおこして、天地に恥じぬつらだましいは、まことに、美玉のようにきよらかで、後光がさしそうな威厳があったのです。
幻術天魔太郎 (新字新仮名) / 野村胡堂(著)