暇取ひまど)” の例文
さらに御史台ぎょしだいに訴え出たが、ここでも容易に判決をくだしかねて、かれこれ暇取ひまどっているうちに、問題の女は又もや姿を消してしまった。
ただ彼はなぜ宗助より先へ横浜を立ったかを語らなかった。また途中どこで暇取ひまどったため、宗助よりおくれて京都へ着いたかを判然はっきり告げなかった。
(新字新仮名) / 夏目漱石(著)
かく暇取ひまどって、いよいよ穴の口元をえぶし出したのは、もう午近くなった頃である。
(新字新仮名) / 永井荷風(著)
「そんな事をいって病人を診て居った日には限りがない。殊に急用を持って居るから病人などを見て暇取ひまどって居る訳には行かない」というと「衆生済度しゅじょうさいどのためですからぜひ診て遣って下さい」
チベット旅行記 (新字新仮名) / 河口慧海(著)
「おお、らざることに暇取ひまどった、老爺おやじ、茶代を置く」
大菩薩峠:02 鈴鹿山の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
そんなことで暇取ひまどって大森を出た二挺の駕籠が今や鈴ヶ森に近くなった頃には、旧暦の九月の日は早くも暮れかかって、海辺のゆう風が薄寒く身にしみた。
経帷子の秘密 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
くわしくいえばパーリー・ゾンで五日暇取ひまどるとすればチベット暦の五月八日まで掛る。で三日追手がラサを出立すると仮定すればちょうど私は関門内にぐずぐずして居る中にとらえてしまう訳です。
チベット旅行記 (新字新仮名) / 河口慧海(著)
たゞかれ何故なぜ宗助そうすけよりさき横濱よこはまつたかをかたらなかつた。また途中とちゆう何處どこ暇取ひまどつたため宗助そうすけよりおくれて京都きやうといたかを判然はつきりげなかつた。しかかれ三四日前さんよつかまへやうや京都きやうといたことだけあきらかにした。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)