しゅん)” の例文
からし菜、細根大根、花菜漬、こういったしゅんの青味のお漬物でご飯を勧められても、わたくしは、ほんの一口しか食べられなかった。
雛妓 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
早晩、俳諧はいかい歳時記など書き改めねばならなくなりそうだ。とはいっても、やはりしゅんのものに越したことはない。
胡瓜 (新字新仮名) / 北大路魯山人(著)
すすきの木菟みみずくしゅんはずれで、この頃はその尖ったくちばしを見せなかったが、名物の風車は春風がそよそよと渡って、これも名物の巻藁にさしてある笹の枝に
半七捕物帳:08 帯取りの池 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
もとより人里には遠く、街道はずれの事なれば、旅の者の往来ゆききは無し。ただ孵化かえり立のせみが弱々しく鳴くのと、山鶯やまうぐいすしゅんはずれに啼くのとが、れつ続きつ聴えるばかり。
怪異黒姫おろし (新字新仮名) / 江見水蔭(著)
野菜は、蕗、茄子なす、人参、セロリー、蓮根、わらびなど、ほとんど全部の野菜を、砂糖づけにしているが、しゅんの時期は、一カ月くらいしかない。果物の方も同じことである。
桃林堂の砂糖づけ (新字新仮名) / 中谷宇吉郎(著)
罷違まかりちごうて旧道を皆歩行あるいてもしゅうはあるまい、こういう時候じゃ、おおかみしゅんでもなく、魑魅魍魎ちみもうりょうしおさきでもない、ままよ、と思うて、見送るとや深切な百姓の姿も見えぬ。
高野聖 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
さばしゅん即ちこれを食ひにけり
五百五十句 (新字旧仮名) / 高浜虚子(著)