捨札すてふだ)” の例文
捨札すてふだも無く、竹を組んだ三脚の上へ無雑作むぞうさに置捨てられてあるが、百姓や樵夫きこりの首ではなくて、ともかくも武士の首でありました。
大菩薩峠:10 市中騒動の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
遺骸のかたわらに、大逆たいぎゃくのために天罰を加うという捨札すてふだがあった。次郎は文化十一年うまれで、殺された時が四十九歳、抽斎よりわかきこと九年であった。
渋江抽斎 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
妨げ致す段その罪最も重ければ光の手にかゝりて相果あひはてずともかみに於て死罪に處し處刑場しおきばの土となす可きところ高運かううんにも光が手に掛りたれば捨札すてふだに惡名を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
文治が先に立って江戸橋へ向って参りますと、真先まっさき紙幟かみのぼりを立て、続いて捨札すてふだを持ってまいりますのは、云わずと知れた大罪人をお仕置場へ送るのでございます。
後の業平文治 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
罪状および刑罰の宣告を記した捨札すてふだを立て、罪人を引廻ひきまわす時にも、罪状と刑罰とを記したのぼりを馬の前に立てて市中を引廻したものであるから、法規はこれを秘密にし
法窓夜話:02 法窓夜話 (新字新仮名) / 穂積陳重(著)
その趣意を捨札すてふだにして、あすこに晒首さらしくびにして参れ。他藩主の恩賞なんどを無作むさと懐中に入れるような奴は謀反、裏切者と同然の奴じゃ。天亀、天正の昔も今と同じ事じゃ。わかったか
名君忠之 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
ひそかに人の首を斬って、橋の上や辻々へ捨札すてふだと共に掛けて置きます。市民の財産の危険はようやく生命の危険におびやかされてきました。
大菩薩峠:10 市中騒動の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
其の捨札すてふだをよんで見ますと、不思議な事で、飯島のお嬢さまと萩原新三郎と私通くッついた所から、伴藏の悪事を働いたということが解りましたから、孝助は主人のめ娘の為め、萩原新三郎の為めに