振鈴しんれい)” の例文
館の大廂おおびさしからは護摩ごまの煙が雲のように立ちのぼり、衆僧の振鈴しんれい誦経ずきょうが異様な喚叫かんきょうをなして二条の町かどあたりまでも聞えてくるほどだった。
私本太平記:13 黒白帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
れど瀧口、口にくはへし松が枝の小搖こゆるぎも見せず。見事みごと振鈴しんれいの響に耳をまして、含識がんしきながれ、さすがに濁らず。
滝口入道 (旧字旧仮名) / 高山樗牛(著)
途端に、隣室の方で、無風流な振鈴しんれいの音が、響き渡った。二人ははッと美しい夢からさめた。多分それは、巡査たちを何かの目的で集合せしめる合図ででもあるであろう。
好色破邪顕正 (新字新仮名) / 小酒井不木(著)
烏芻沙摩変成男子うすさまへんじょうなんしの法、五大虚空蔵、六観音、六字訶臨訶利帝母かりんかりていも、八字文殊普賢延命ふげんえんみょう護摩ごまの煙りを内苑に満たせ、振鈴しんれいの音を掖殿えきでんに響かせ、祈り立て祈り立てしている筈じゃ。
あさひの鎧 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
それが振鈴しんれい
晶子詩篇全集 (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)
月の光にかげくらき、もりの繁みをとほして、かすかに燈のひかり見ゆるは、げにりし庵室と覺しく、隣家とても有らざれば、げきとして死せるが如き夜陰の靜けさに、振鈴しんれいひゞきさやかに聞ゆるは
滝口入道 (旧字旧仮名) / 高山樗牛(著)
祈祷の声はなおも続き、振鈴しんれいの音もつづいて聞こえた。
あさひの鎧 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)