挟撃きょうげき)” の例文
大刀どすと、棒と、匕首あいくちとが、挟撃きょうげきしてわめき立った。庄次郎は眼の中へ流れこむ汗をこらえて善戦したが、相手の数は少しも減らなかった。
松のや露八 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
柱と壁の隙間すきまが離れてそこから風が砂塵さじんと共に吹きつけた。彼女は自分の体が壁に挟撃きょうげきされそうな気がし、輝雄を突き落さんばかりに転げ落ちながらけ降りた。
細雪:02 中巻 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
開始するのではない。彼等は、協力して東西から、わが大東亜共栄圏を挟撃きょうげきしようというのである
地球要塞 (新字新仮名) / 海野十三(著)
挟撃きょうげきでもするように、その瞬間に二人の門弟が、背後からドッと斬り込んだ。
娘煙術師 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
そのために、橋廊下へ踏みのぼった明智の武者は、挟撃きょうげきって、突き立てられ、斬り落され、その下にかばねを積んだ。
新書太閤記:07 第七分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
これはいうまでもなく東海東山両道から兵をすすめるのみでなく、北の奥羽からも官軍を攻めのぼらせて鎌倉を挟撃きょうげきさせようとの兵略にほかならなかった。
私本太平記:10 風花帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
さきに麓へ追って行った堀隊の一部もまた、秀政の案じたとおり挟撃きょうげきをうけて、惨たる苦戦に立ってしまった。
新書太閤記:08 第八分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
進まんか、防柵や鉄砲にはばめられ、退こうとすれば、敵の追撃、また挟撃きょうげきに揉みつつまれ、さしも百錬ひゃくれんを誇る甲州武者も、その勇をほどこす間隙かんげきもなかった。
新書太閤記:05 第五分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
宇喜多直家は、城中の兵としめしあわせて、秀吉の包囲軍を挟撃きょうげきするつもりで、備前から出馬して来た。
新書太閤記:05 第五分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
いや、それも力をもって、無碍むげに攻めおとそうとすれば、当然、一と三の両曲輪からも援けを出し、お味方は挟撃きょうげきをうけて、勢い全体の激戦と化さざるを得ません。
新書太閤記:04 第四分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
妻女山の兵と、旭城の兵とが、わが軍を誘うて、挟撃きょうげきに出んなどとは、思いもよらぬことであります。
上杉謙信 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
夏侯淵に挟撃きょうげきされ、支離滅裂に討ち減らされて、わずか三、四十騎と共に、小沛しょうはいの城へさして逃げてくると、もう河をへだてた彼方に、火の手がまッ赤に空を焦がしていた。
三国志:05 臣道の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
そしてやがて、東西挟撃きょうげきして在中国の羽柴軍を粉砕せんと答えて来るにちがいない。——そう希望し、そう判断して、吉報の到るのを、今か今かと、心待ちにしている程だった。
新書太閤記:08 第八分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
正成が、機は絶好と見たのは、一時にせよ、尊氏の水軍が沖へ退いたからには、今なら挙げて、友軍義貞と共に、足利直義の主軍を、この会下山と二本松との両方から挟撃きょうげきできる——。
私本太平記:12 湊川帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「寄手の奴らを一人も生かして帰すな」と、東西から挟撃きょうげきした。
三国志:03 群星の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)