折伏しゃくぶく)” の例文
春廼舎をあきたらなく思っていたには違いないが、訪問したのは先輩を折伏しゃくぶくして快を取るよりは疑問を晴らして益をくるツモリであったのだ。
二葉亭四迷の一生 (新字新仮名) / 内田魯庵(著)
「いや。わたくしは群生ぐんしょうを福利し、憍慢きょうまん折伏しゃくぶくするために、乞食こつじきはいたしますが、療治代はいただきませぬ」
寒山拾得 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
……お浦こそその女子! ……しかし、そなたの、頼母殿を想う念力強ければ、お浦など、折伏しゃくぶくすること出来ましょう! ……弱ければ、折伏されるまでよ! ……お浦!
血曼陀羅紙帳武士 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
那須野ヶ原の古樹のくいに腰を掛け、三国伝来の妖狐ようこを放って、殺生石の毒をあびせ、当番のワキ猟師、大沼善八を折伏しゃくぶくして、さて、ここでこそと、横須賀行の和尚の姿を、それ、髣髴ほうふつして
白金之絵図 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
「売国的邪宗門としてのマルキシズムの鬼畜的思想運動」を折伏しゃくぶくしようと思うことも出来るし、又もう少し賢明な場合にはマルクス主義を華厳教や空観に帰着せしめたりすることも出来る。
範疇の発生学 (新字新仮名) / 戸坂潤(著)
応永のころ一条戻橋もどりばしに立って迅烈じんれつ折伏しゃくぶくを事とせられたあの日親という御僧——、義教よしのり公のいかりにふれて、舌を切られ火鍋ひなべかぶらされながらつい称名しょうみょう念仏を口にせなんだあの無双の悪比丘あくびく
雪の宿り (新字新仮名) / 神西清(著)
そしてあの世棄人よすてびとも、遠い、微かな夢のように、人世じんせいとか、喜怒哀楽とか、得喪利害とか云うものを思い浮べるだろう。しかしそれはあの男のためには、くに一切折伏しゃくぶくし去った物に過ぎぬ。
冬の王 (新字新仮名) / ハンス・ランド(著)
「厳父」の愛と、「慈母」の愛、それが区別といえば区別です。それはしかってくれる愛と、抱いてくれる愛です。叱ってくれる愛、それは智慧ちえの世界です。批判の世界です。折伏しゃくぶくの世界です。
般若心経講義 (新字新仮名) / 高神覚昇(著)
それはちょうど日蓮教徒の折伏しゃくぶくの熱意にも似ていた。
美しい日本の歴史 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「牧を、折伏しゃくぶく致す。早く致せ」
南国太平記 (新字新仮名) / 直木三十五(著)
「俺の思想に間違いはない。俺の考えはくずれはしない。しかし力は不足している。思想がじきに力と成って、いかなる者をも折伏しゃくぶくする、そこまで行かなければ本当とは云えない」
神州纐纈城 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
応永のころ一条戻橋もどりばしに立つて迅烈じんれつ折伏しゃくぶくを事とせられたあの日親といふ御僧——、義教よしのり公のいかりにふれて、舌を切られ火鍋ひなべかぶらされながらつい称名しょうみょう念仏を口にせなんだあの無双の悪比丘あくびく
雪の宿り (新字旧仮名) / 神西清(著)