手当てあたり)” の例文
旧字:手當
雪国のならいとして、板屋根には沢山の石が載せてあるので、彼は手当てあたり次第に取って投げた。石のつぶてと雪の礫とが上下うえしたから乱れて飛んだ。
飛騨の怪談 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
勝手かつての方へ立いで見れば家内かないの男女狂気きやうきのごとくかけまはりて、家財かざいを水にながさじと手当てあたりしだいに取退とりのくる。水はひくきに随てうしほのごとくおしきたり、すでたゝみひたにはみなぎる。
世間の者がゆめにも知らぬ血と泥の大沼の片端かたはしでも見ておこうと、そう覚悟かくごがきまっては気味の悪いも何もあったものじゃない、体中珠数生じゅずなりになったのを手当てあたり次第にむし
高野聖 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
就中なかんずく、風呂敷にもたもとにも懐にも盗みあまって、手当てあたり次第に家々から、夥間なかまが大道へ投散らした、あられのごとき衣類調度は、ひた流しにずるずると、山から海へ掃き出して、ここにあらかじめもやった船に
わか紫 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)