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愬
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うった
ふりがな文庫
“
愬
(
うった
)” の例文
彼女は線香の火をかざしながら、亭主の顔色をみいみい不平を
愬
(
うった
)
えるが、鷲尾はけんめいに下ッ腹に力をいれ眼をつぶっているのだ。
冬枯れ
(新字新仮名)
/
徳永直
(著)
それで、結局、父親を訪ねよう、会って事情を
愬
(
うった
)
えたなら父親は金持ちだから助けてくれるにちがいない——そんな風に決心しました。
無駄骨
(新字新仮名)
/
モーリス・ルヴェル
(著)
女郎
(
いらつめ
)
が未だ若い家持に
愬
(
うった
)
える気持で甘えているところがある。万葉末期の細みを帯びた調子だが、そういう中にあっての佳作であろうか。
万葉秀歌
(新字新仮名)
/
斎藤茂吉
(著)
日曜の度に、牧師が、キリスト教普及の運動を、それが現代に於ける信者達の早急の任務であることを、熱涙をもって
愬
(
うった
)
えるからであった。
反逆
(新字新仮名)
/
矢田津世子
(著)
それで苦しい
極
(
きわ
)
み、貧しい極み、生活を否定しようとするような場合、世の中に絶望したような場合、深刻な悲痛な情緒を
愬
(
うった
)
えようとする場合にでも
俳句への道
(新字新仮名)
/
高浜虚子
(著)
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中丸は当時その師抽斎に説くに、頗る多言を
費
(
ついや
)
し、矢島氏の
祀
(
まつり
)
を絶つに忍びぬというを以て、抽斎の
情誼
(
じょうぎ
)
に
愬
(
うった
)
えた。
渋江抽斎
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
そして、娘は自分の態度を説明するのに女の
操
(
みさお
)
というような決定的の文字さえ使っていた。娘はなお、自分の
患
(
わずら
)
って居ることを報告して切々情を
愬
(
うった
)
えている。
宝永噴火
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
私はあの免職教員へ悉くあった事、之から起りそうな事を話し、
愬
(
うった
)
え、懺悔しよう。神を知らぬ私は、唯、あの教員に「許して下さい。」と願って伏し倒れよう。
職工と微笑
(新字新仮名)
/
松永延造
(著)
近松は、この世の義理に苦しみ、社会の制裁に怯える男女の歎きと愛着とを、七五調の極めて情緒的な、感性的な文章で
愬
(
うった
)
えて、当時のあらゆる人の心を魅した。
私たちの建設
(新字新仮名)
/
宮本百合子
(著)
武力に
愬
(
うった
)
えて、弱い者から飲み代を、稼ごうと言う
了簡
(
りょうけん
)
を考えると、人間の風上に置けない気がした。
雪之丞変化
(新字新仮名)
/
三上於菟吉
(著)
言葉に私の気持を伝える力がないとしましたら、私はあなたさまの御心に直接すがり
愬
(
うった
)
えましょう。
エリザベスとエセックス
(新字新仮名)
/
リットン・ストレイチー
(著)
素子を通して谷村に言ひかける素振ではなく、主として素子に懇願し、その衷情を
愬
(
うった
)
へた。谷村にやりこめられたせゐばかりではないやうだつた。岡本の話の中に濁りがあつた。
女体
(新字旧仮名)
/
坂口安吾
(著)
泳ぐような身振りで蚊帳の裾をくぐると、足許に匐っている薄暗い空気を手探りながら、向側に吊してある蚊帳の方へ、何か絶望的な、
愬
(
うった
)
えごとをもって、私はふらふらと近づいて行った。
翳
(新字新仮名)
/
原民喜
(著)
そうかと思うと「
灰汁
(
あく
)
のような色の雪雲、日に
夜叉神
(
やしゃじん
)
(峠の名)のあたりより、鳳凰、地蔵より縞目を
作
(
な
)
して立ち昇り、白峰を見ざること久し」(十二月十七日)と
渇
(
かつ
)
えた情を
愬
(
うった
)
えて来る
雪の白峰
(新字新仮名)
/
小島烏水
(著)
「暴力には
愬
(
うった
)
えたくないものだが」と科長がその助手に言った。
紅い花
(新字新仮名)
/
フセヴォロド・ミハイロヴィチ・ガールシン
(著)
その
遣
(
や
)
るせなさを
嫋々
(
じょうじょう
)
と
愬
(
うった
)
えている。
宮本武蔵:02 地の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
そして、もう
愬
(
うった
)
えている自分の姿が眼前にちらつき、涙がこみあげてくる。お春を呼んで、普段は使っていない離れの茶室へ火を入れさせた。
女心拾遺
(新字新仮名)
/
矢田津世子
(著)
喚子鳥の声は、人に
愬
(
うった
)
えて呼ぶようであるから、その声を聞いて自分の身の上に移して感じたものである。
万葉秀歌
(新字新仮名)
/
斎藤茂吉
(著)
人間は利害関係だけでも本当に分かっていれば、むちゃな事は出来ない。
基督
(
キリスト
)
の山の説教なんぞを高尚なように云うが、あれも利害に
愬
(
うった
)
えているのですからねぇ。
蛇
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
第二句で、「降り来る雨か」と詠歎して、
愬
(
うった
)
えるような響を持たせたのにこの歌の中心があるだろう。
万葉秀歌
(新字新仮名)
/
斎藤茂吉
(著)
しかしいつも藩主の反感に
阻
(
さまた
)
げられて事が行われなかった。そこで伊沢兄弟と抽斎とは先ず茝庭の同情に
愬
(
うった
)
えて幕府の用を勤めさせ、それを規模にして阿部家を説き
動
(
うごか
)
そうと決心した。
渋江抽斎
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
愬
漢検1級
部首:⼼
14画