かしこ)” の例文
ここに天皇、その御子の建く荒き情をかしこみて、詔りたまひしく、「西の方に熊曾建くまそたける二人あり。これまつろはず、禮旡ゐやなき人どもなり。かれその人どもを取れ」
是に於いて、皇太子た使者を返し、其の衣を取らしめ、常のごとたまふ。時の人大にあやしみて曰く、聖の聖を知ること、其れまことなる哉。いよいよかしこまる。
大和古寺風物誌 (新字新仮名) / 亀井勝一郎(著)
優鈿うでん大王だいおうとか饂飩うどん大王だいおうとやらに頼まれての仕事しわざ、仏師もやり損じては大変と額に汗流れ、眼中に木片ききれ飛込とびこむも構わず、恐れかしこみてこそ作りたれ、恭敬三昧きょうけいざんまいうれしき者ならぬは
風流仏 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
文の便りの度々につられて萬一もしやと思ひしは昔、今日のお蘭は其やうな優しきお孃樣氣をすてたれば、古手の嬉しがらせに仰せをかしこみて御別莊に御機嫌をうかゞふまでの耻はさらさじ
暗夜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
ここにその國主こにきし一二かしこみてまをしてまをさく、「今よ後、天皇おほきみの命のまにまに、御馬甘みまかひとして、年のに船めて船腹さず、柂檝さをかぢ乾さず、天地のむた、退しぞきなく仕へまつらむ」