惨憺みじめ)” の例文
旧字:慘憺
かれはこの惨憺みじめさと溽熱むしあつさとにおもてしわめつつ、手荷物のかばんうちより何やらん取出とりいだして、忙々いそがわしく立去らむとしたりしが、たちまち左右をかえりみ
取舵 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
御蔭おかげで、岩で骨が痛んだり、泥で着物がよごれたりする憂いがないだけ、惨憺みじめなうちにも、まだ嬉しいところがあった。そうして、硬く曲った背中を壁へたせた。
坑夫 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
主将、副将ともに捕われた後の美人連は、惨憺みじめなものであります。羊の中へ狼が乱入したように、ひとたまりもなく引っ抱えられて引っ担がれる、泣き叫ぶ、狂う。
番人もむごいぞ、頭を壁へ叩付けて置いて、掃溜はきだめへポンと抛込ほうりこんだ。まだ息気いきかよっていたから、それから一日苦しんでいたけれど、彼犬あのいぬくらべればおれの方が余程よッぽど惨憺みじめだ。
うをるとれば、あみげる、あみ両手りやうてで、ぐい、といて、こゝろみづられるとき惨憺みじめさ。
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)