こたえ)” の例文
旧字:
「ちょいと、ていると思うもんだから、お前は生意気だね。」といって掻巻の上を軽く叩くと、ふわりと手が沈んでこたえがない。
湯島詣 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
「やあ」と受けこたえがあった。そのまま洋杖ステッキは動かなくなる。本来は洋杖さえ手持無沙汰なものである。
虞美人草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
「うん」とこたえたぎり、ひとりは見向きもしない。するとひとりは巻煙草を出して
恋を恋する人 (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
馴々なれなれしくて犯しやすからぬ品のいい、いかなることにもいざとなれば驚くに足らぬという身にこたえのあるといったような風の婦人おんな、かく嬌瞋きょうしんを発してはきっといいことはあるまい
高野聖 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
薄紅色ときいろに深く唐草からくさを散らした壁紙に、立ちながら、手頃に届く電鈴ベルを、白きただ中に押すと、座に返るほどなきにこたえがある。入口の戸が五寸ばかりそっとく、ところを振り返った母が
虞美人草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
と続けざまに声を懸けたが、内はしんとしてこたえがない、耳を澄ますと物音もしないで、かえって遠くの方で、化けたかわずが固まって鳴くように、南無阿弥陀仏南無阿弥陀仏、南無阿弥陀仏南無阿弥陀仏。
湯女の魂 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)