徴発ちょうはつ)” の例文
まあまあ、親の授けてくれた鼻に満足しない不孝ものから罰金を徴発ちょうはつするんだから、一種の勧善懲悪かんぜんちょうあくで、道徳的な商売さと言っています
親鳥子鳥 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
お米の手に持つ菊の花、かざった菊の植木鉢、それから借金取が取ってき出す手箒てぼうきも、皆彼の家から若者等が徴発ちょうはつして往ったのである。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
これはみな近村の農夫らしいが、徴発ちょうはつをうけて、馬糧を刈ったり、道をひらいたり、運輸の手伝いなどしているいわゆる軍夫たちであった。
上杉謙信 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
わたしは、もと百しょうでした。うまって、はたらいていました。それが、戦争中せんそうちゅううま徴発ちょうはつされたのです。
道の上で見た話 (新字新仮名) / 小川未明(著)
この御納屋の特権は、良い魚類とみれば勝手に徴発ちょうはつを許されていることである。御納屋の役人が或る魚を指さして、「これは御用だぞ」と云ったが最後、いやでも応でもその魚を納めなければならない。
半七捕物帳:69 白蝶怪 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
馬匹ばひつ徴発ちょうはつが行われた。具足師へ修理に出してあるよろいや物の具を家中の侍はみな催促に争っている。等、等、等、相次ぐ情報なのである。
新書太閤記:03 第三分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
舞台横手のチョボのゆかには、見た様な朝鮮簾ちょうせんみすが下って居ると思うたは、其れは若い者等が彼の家から徴発ちょうはつして往った簾であった。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
けれどそれは、阿波三好党の反信長軍から、多額な「矢銭やせん」を徴発ちょうはつされた後だったから、黄金としては、ほとんど少なかった。
新書太閤記:03 第三分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
それはいいが、定例じょうれい助郷すけごうのほかに、毎日、植林その他、無給仕事に、お助けと称して一家の働き手を徴発ちょうはつされる百姓たちは、食えない上に、食えなくなった。
(新字新仮名) / 吉川英治(著)
人税というのは、一戸当り幾人という労力を、月割に徴発ちょうはつすることで、勿論、無報酬の労働なのである。
(新字新仮名) / 吉川英治(著)
その日の黄昏たそがれから夜にかけて、もうおびただしい馬、牛、車などが徴発ちょうはつされ、千人をこえるであろう人夫や兵卒が松明たいまつをかざし、材木や石の綱を曳き、山内と大倉郷との道すじは
源頼朝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
この近村から軍糧の徴発ちょうはつに当っていたが、とかく庄屋や百姓たちのあいだに、不正や非協力的言動が絶えないので、堀尾茂助に行ってもらって、庄屋どもを大いに叱ってもらうつもりで——と
新書太閤記:07 第七分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)