なお)” の例文
顔を上げた私と、枕にもたれながら、じっと眺めた母と、顔が合うと、坊や、もうなおるよと言って、涙をはらはら、差俯向さしうつむいて弱々よわよわとなったでしょう。
薬草取 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
まだ両親ふたおやともあったんです。母親が大病で、暑さの取附とッつきにはもう医者が見放したので、どうかしてそれをなおしたい一心で、薬を探しに来たんですな。
薬草取 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
(さあどうだ、お前、男を思い切るか、それを思い切りさえすればなおる病気じゃないか、どうだ、さあこれでも言う事を聞かないか、薬は利かないか。)
湯女の魂 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
難有ありがとう存じます、まだちっとも眠くはござりません、さっき体を洗いましたので草臥くたびれもすっかりなおりました。)
高野聖 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
お雪の病気をなおすにも怪しいものを退治るにも、耆婆扁鵲きばへんじゃくに及ばず、宮本武蔵、岩見重太郎にも及ばず、ただ篠田の心一つであると悟りましたので、まだ
湯女の魂 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
何となく心に浮んだは、ああ、向うの山から、月影に見ても色のくれないな花を採って来て、それを母親の髪に挿したら、きっと病気がなおるに違いないと言う事です。
薬草取 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
貴僧あなた、申せば何でも出来ましょうと思いますけれども、この人の病ばかりはお医者の手でもあの水でもなおりませなんだ、両足が立ちませんのでございますから
高野聖 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
(お雪や、お前、あんまり可哀そうだから、私がその病気をなおして上げる、一所においで。)
湯女の魂 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
初手しょては若い男ばかりに利いたが、だんだん老人としよりにも及ぼして、後には婦人おんなの病人もこれでなおる、復らぬまでも苦痛いたみが薄らぐ、根太ねぶとうみを切って出すさえ、びた小刀で引裂ひっさく医者殿が腕前じゃ
高野聖 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)