御上おあが)” の例文
「ええ。今ちょっと散歩に出掛ましたから、もうじき帰りましょうって御止めしたんですけれども、時間がないからって御上おあがりになりませんでした」
道草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
聞んと長八のうちゆき最早もはや長八殿は歸られしやと云に女房にようばううめなになかもとをして居たりしが振返ふりかへりオヤ何誰どなたかと存じたら長兵衞さん先々まづ/\此方こちら御上おあがくだされよとて此程中のれい
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
だから一つ牧野さんだと思って、——可愛い牧野さんだと思って御上おあがんなさい。
奇怪な再会 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
「やー貴公きみでしたか、暗いのにまあ、さあ、御上おあがりなさい」。
愛か (新字新仮名) / 李光洙(著)
マ、とにかく御すすぎをなさって御上おあがりなさいまし。
観画談 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
「やあ、もう御上おあがりですか。早いですな」と答へた。此挨拶では、もう一遍、何がうまいんだと聞かれもしなくなつたので、其儘書斎へかへつて、椅子いすこしを掛けて休息してゐた。
それから (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
上がり口で二人連ふたりづれではないと断わる筈の所を、らつしやい、——どうぞ御上おあがり——御案内——梅の四番などとのべつに喋舌しやべられたので、やむを得ず無言の儘二人ふたり共梅の四番へ通されて仕舞つた。
三四郎 (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
「もう叱られる気遣きづかいはないか。それじゃ一つやるかな。糸公も一つ御上おあがり。どうだい藤尾さん一つ。——しかしなんだね。阿爺おとっさんのような人はこれから日本にだんだん少なくなるね。惜しいもんだ」
虞美人草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
「さあ、御上おあがんなさい。まだあるんだが人が込んでて容易に手が届かない」と云う。高柳君は自分にくれるにしては目の見当が少し違うと思ったら、うしろの方で「ありがとう」と云う涼しい声がした。
野分 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
「番茶を一つ御上おあがり。志保田の隠居さんのようなうまい茶じゃない」
草枕 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
「画工さんか。それじゃ御上おあがり」
草枕 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)