徘徊さまよ)” の例文
坂道を下りつくし、町のちまたに出て小路こうじの中に姿を没したと見えたが、その後は、どこをどうして徘徊さまようているか消息が分らない。
大菩薩峠:31 勿来の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
老人、唯今の心地を申さば、炎天にこうべさらし、可恐おそろしい雲を一方の空にて、果てしもない、この野原を、足をこがし、手を焼いて、徘徊さまよ歩行あるくと同然でござる。
白金之絵図 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
それでもいくらかはね運動うんどうにぶつてるのかはるのやうではなくひく徘徊さまようて皺嗄しやがれたのどらしてる。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
ようやく人買いの眼をくらませ、夢中でここまで逃げては来ましたが、知人しりびとはなしたくわえもなし、うろうろ徘徊さまよっておりますうちには乞食非人にちようとも知れず
八ヶ嶽の魔神 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
ト言ったその声が未だ中有ちゅうう徘徊さまよッている内に、フト今年の春向島むこうじま観桜さくらみに往った時のお勢の姿を憶出し、どういう心計つもり蹶然むっくと起上り、キョロキョロと四辺あたり環視みまわして火入ひいれに眼をけたが
浮雲 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)