後陣ごじん)” の例文
「右脇には、武田太郎義信様。望月甚八郎どの。——また後陣ごじんとしては、跡部大炊介どの、今福浄閑斎どの、浅利式部少輔どの……」
上杉謙信 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
と深くも考えずに浮気うわきの不平だけを発表して相手の気色けしきうかがう。向うが少しでも同意したら、すぐ不平の後陣ごじんり出すつもりである。
琴のそら音 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
米友がそうさとってくると、おのずからまた力瘤ちからこぶが満ちて、じだんだが川原の砂地へ喰い入りました。ここで今、生活の白兵戦が始まるのだ、さあ後陣ごじんが続く続く。
大菩薩峠:36 新月の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
打出ヶ浜から御影みかげへかけての大事な一戦の日に——理由なく後陣ごじんへさげられ、そのまま不面目な帰洛を余儀なくされていたのだった。
私本太平記:10 風花帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
足軽多くを先に立て、槍隊をすぐ続かせ、鉄砲組は、後陣ごじんの先へ置け。——伏兵の起る際は、得て、鉄砲は近すぎて、咄嗟の用にはたたぬものよ。
新書太閤記:08 第八分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
いやいかに道義がすたった今でも彼のごときは全くれです。稀れなぬえです。箱根合戦の後陣ごじんから裏切って、この義貞を死地におとしたのも彼の才覚。
私本太平記:10 風花帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
と、いまさらほぞをかんでもいつかない、後陣ごじんには石見守いわみのかみ家中かちゅうがうしろまきをしているといえば、げだしたところで、すぐとつかまって血祭ちまつりになるのは知れている。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「六角勢は後陣ごじんとなって、きまとう野伏ばらに、防ぎ矢しつつおあとからまいられい。——また糟谷三郎宗秋は、さきを駈けて、よりつく賊を打ち払い、おん輿こしの行く道を開け」
私本太平記:08 新田帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
後陣ごじんの大将が代って出た。そして新手を誇って言った。
私本太平記:04 帝獄帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)