引請ひきう)” の例文
女弁護士はその弁護を引請ひきうけて、法廷に立つた。そして色々の方面から熱心に喋舌しやべつたかひがあつて、黒人くろんぼうまく無罪になつた。
これまでも二三度頼まれたことがあるから、おやすい御用と引請ひきうけて、さて宛名はと聞いてみると、小林だ。
四十八人目 (新字新仮名) / 森田草平(著)
頼まれたのは、蒲生家がもうけの浪人で今は商人あきうどとなった、七日町の植木才蔵うえきさいぞうという人であった。快く引請ひきうけた。
討たせてやらぬ敵討 (新字新仮名) / 長谷川伸(著)
「そやよってに、いずれゆっくり出直して来させますけど、今度は一遍連れて帰ります云うて、あたしから味善あんじょう云うて欲しい、それ引請ひきうけてくれたら行く、云うてますねん」
細雪:03 下巻 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
上中下の仕事なんでも引請ひきうけて、れは出来ない、れはいやだといったことはない。
福翁自伝:02 福翁自伝 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
ふるふ共此越前守が眼力がんりきにて見拔みぬきたるに相違なし無益の舌のうごかさずともサア眞直まつすぐに白状せよと申さるゝに平左衞門コハなさけなき事を伺ひ候もの哉私し儀聊かも言葉ことばかざらず主人の惡事あくじを身に引請ひきうけん事を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
とりわけ脚本が書卸かきおろものの場合になると、あらかじめ役どころの見当がつかないだけに、俳優やくしやは物言ひばかり多くて、なかなか役を引請ひきうけようと言はない。
小平太が進んでこの危い役割を引請ひきうけたのは、一つは心のうちを見透みすかされまいとする虚勢きょせいからでもあったが、一つにはまた、ここで一番自分の働きぶりを見せて
四十八人目 (新字新仮名) / 森田草平(著)
二三年前までは何処の医者でも訳なく手術を引請ひきうけてくれたものだけれども、近頃は追い追いそう云うことをやかましく云う社会状勢になって来たので、今日ではたとい妙子が納得しても
細雪:03 下巻 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
広沢は自分の書いた物で、仏様に結縁けちえんが出来る事なら、こんな結構な事は無からうと思つて、安受合やすうけあひ引請ひきうけた。そして僧侶ばうずを待たせておいて直ぐその場で書き出した。
でも国嶋のような社会的地位のある有力者が、それほど迄に彼にれ込み、かつ将来を引請ひきうけると云うからには、それを信ずるより外はなかったし、それに、ありていに云えば、妻の幸子が
細雪:03 下巻 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)