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引汐
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ひきしお
ふりがな文庫
“
引汐
(
ひきしお
)” の例文
堀割は丁度真昼の
引汐
(
ひきしお
)
で
真黒
(
まっくろ
)
な汚ない
泥土
(
でいど
)
の底を見せている上に、四月の暖い日光に照付けられて、
溝泥
(
どぶどろ
)
の臭気を
盛
(
さかん
)
に発散している。
すみだ川
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
丁度
引汐
(
ひきしお
)
時で、
朝凪
(
あさな
)
ぎの
小波
(
さざなみ
)
が、穴の入口に寄せては返す度毎に、中から海草やごもくなどが、少しずつ流れ出していたが、それに混って
孤島の鬼
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
縁日はもう
引汐
(
ひきしお
)
の、黒い
渚
(
なぎさ
)
は掃いたように静まった河岸の
側
(
かわ
)
で、さかり場からはずッと
下
(
さが
)
って、西河岸の
袂
(
たもと
)
あたりに、そこへ……その
夜
(
よ
)
は、紅い
涎掛
(
よだれかけ
)
の飴屋が出ていた。
日本橋
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
水際
(
みぎわ
)
に立って、折から
引汐
(
ひきしお
)
の川底ばかり
睨
(
にら
)
んでいた平次も、
諦
(
あきら
)
めて立ち上がります。
銭形平次捕物控:055 路地の小判
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
気のどくらしくて、見ていられない舞台だから、誘い手のある
引汐
(
ひきしお
)
に会場を出たのです。
雪柳
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
▼ もっと見る
「出ますよ出ますよ」と呼びながら一向出発せずに豆腐屋のような鈴ばかり
鳴
(
なら
)
し立てている
櫓舟
(
ろぶね
)
に乗り、
石川島
(
いしかわじま
)
を向うに望んで
越前堀
(
えちぜんぼり
)
に添い、やがて、
引汐
(
ひきしお
)
上汐
(
あげしお
)
の波にゆられながら
深川の唄
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
町の芸者や
半玉
(
はんぎょく
)
なども数名座に
侍
(
はべ
)
ったのですが、彼女等もそれぞれ引取って了い、客は菰田邸に泊るものもあれば、それから又どこかへ姿を隠すものもあり、座敷は
引汐
(
ひきしお
)
の跡の様で
パノラマ島綺譚
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
築地
(
つきじ
)
の
河岸
(
かし
)
の船宿から
四梃艪
(
しちょうろ
)
のボオトを借りて遠く
千住
(
せんじゅ
)
の方まで漕ぎ
上
(
のぼ
)
った帰り
引汐
(
ひきしお
)
につれて
佃島
(
つくだじま
)
の手前まで
下
(
くだ
)
って来た時、突然
向
(
むこう
)
から帆を上げて進んで来る大きな
高瀬船
(
たかせぶね
)
に衝突し
日和下駄:一名 東京散策記
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
「上手だ。自分でも髪を結えるね。ああ、よく似合う。さあ、見て御覧。何だ、袖に映したって、映るものかね。ここは
引汐
(
ひきしお
)
か、水が動く。——こっちが
可
(
い
)
い。あの松影の澄んだ処が。」
小春の狐
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
引
常用漢字
小2
部首:⼸
4画
汐
漢検準1級
部首:⽔
6画
“引汐”で始まる語句
引汐時