引挘ひきむし)” の例文
たまらなくなって、飛出して、つるを解こうと手を懸ける。胸を引いてつむりるから、葉を引挘ひきむしって、私は涙を落しました。
星女郎 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
こうと知ったら、定めし白髪しらが引挘ひきむしって、頭を壁へ打付けて、おれを産んだ日を悪日あくびのろって、人の子を苦しめに、戦争なんぞを発明した此世界をさぞののしこッたろうなア!
まさか君はあの三人をわしから引挘ひきむしって行って、一と儲けをたくらむような、そんなことはあるまいね、——洋子たちは此処で充分幸福なのだ、そっとして置いてやってくれたまえ、それに
植物人間 (新字新仮名) / 蘭郁二郎(著)
這奴しゃつ等が群り居た、土間の雨に、引挘ひきむしられたきぬあやを、驚破すわや、蹂躙ふみにじられた美しいひとかと見ると、帯ばかり、扱帯しごきばかり、花片はなびらばかり、葉ばかりぞ乱れたる。
陽炎座 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
その鼻を引挘ひきむしいで小鳥の餌をってやろう、というを待たず、猟夫の落した火縄たちまち大木の梢に飛上とびあがり、たった今まで吸殻ほどの火だったのが、またたくうちに松明たいまつおおきさとなって
遺稿:02 遺稿 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
どんな顔をされまいものでもないと、口惜くやしさは口惜し、憎らしさは憎らし、もうもうつかみついて引挘ひきむしってやりたいような沢井の家の人の顔を見て、お米に逢いたいと申して出ました。
政談十二社 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)