弁慶縞べんけいじま)” の例文
半七も商売柄で、ふと立ちどまってその横町をのぞくと、弁慶縞べんけいじま浴衣ゆかたを着た小作りの男がその群れをはなれて、ばたばた駈けて来た。
半七捕物帳:05 お化け師匠 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
亀蔵はその時茶の弁慶縞べんけいじまの木綿綿入を着て、木綿帯を締め、あい股引ももひき穿いて、脚絆を当てていた。懐中には一両持っていた。
護持院原の敵討 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
「お前が徒刑場で使っていたあの弁慶縞べんけいじまの編みズボンつりを、お前は覚えていないか。」
民子は今日を別れと思ってか、髪はさっぱりとした銀杏返いちょうがえしに薄く化粧をしている。煤色すすいろと紺の細かい弁慶縞べんけいじまで、羽織も長着も同じい米沢紬よねざわつむぎに、品のよい友禅縮緬ゆうぜんちりめんの帯をしめていた。
野菊の墓 (新字新仮名) / 伊藤左千夫(著)
と気の早い弁慶縞べんけいじまや豆絞りの連中が、思い思いに向う鉢巻、足ごしらえをしながら
剣難女難 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
こん弁慶縞べんけいじま高柳郷たかやなぎごうにかぎれり。右いづれも魚沼うをぬまぐんの村々也。此ちゞみをいだす所二三ヶ村あれど、もつはらにせざればしばらくおきてしるさず。縮は右村里の婦女ふぢよらが雪中にこもあひだ手業てわざ也。
仮髪かつらは前幕の通にて、着附は茶の細い弁慶縞べんけいじま(木綿と見するも、実は姿を好くするため、結城紬ゆうきつむぎを用ゐる)に、浅黄あさぎのもうか木綿の裏ついたるあわせと白紺の弁慶の縞の太さ一寸八分なる単衣ひとえとを重ね
刑事は弁慶縞べんけいじまのふところから捕繩ほじょうを出した。
地獄風景 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
それでそのまま差さずにしまって置いた。その傘は白地に細かい弁慶縞べんけいじまのようなかたが、あいで染め出してあった。たしがらやの店にいた女の蝙蝠傘がそれと同じだと云うことを、お常ははっきり認めた。
(新字新仮名) / 森鴎外(著)