建直たてなお)” の例文
或日主人は外から帰って見ると先祖代々住古すみふるした邸宅は一見あらた建直たてなおされたのかと思うばかりその古びた外観を
雨瀟瀟 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
で、その後もかくにの窓からちる人があるので、当時いまの殿様もひどくそれを気にかけて、近々ちかぢかうちにアノ窓を取毀とりこわして建直たてなおすとか云っておいでなさるそうですよ
画工と幽霊 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
建直たてなおした落成式、停車場ステイションに舞台がかかる、東京から俳優やくしゃが来る、村のものの茶番がある、もちく、昨夜も夜通し騒いでいて、今朝けさ来がけの人通りも、よけて通るばかりであったに
春昼 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
……今から二十余年前……福岡の県立病院が医科大学に改造されてこの松原に建直たてなおされた当時の事、その大学の第一回の入学生として這入って来た青年の中に、WとMという二人がいた。
ドグラ・マグラ (新字新仮名) / 夢野久作(著)
それから変事が続きてすまいきれず、売物に出したのをある者がかいうけ、その土蔵を取払とりはらって家を建直たてなおしたのだが、いまだに時々不思議な事があるので、何代かわっても長く住む者が無いとの事である。
枯尾花 (新字新仮名) / 関根黙庵(著)
土地会社へ勤めていた重吉もこれまでにない賞与金をもらったくらいで、丁度歌舞伎座かぶきざあらた建直たてなおされた時、重吉は種子の衣類に身を飾ったお千代を連れて見物に行く。
ひかげの花 (新字新仮名) / 永井荷風(著)